データが示す、年代別の体罰&パワハラ体験と
体罰への肯定的感情
僕は何事も無難にこなす、なんの変哲もない、そんじょそこらにいるまあまあの優等生だったので、そこまでワイルドな体罰経験などないに等しいのだが、それでもいくつかの思い出が脳にこびりついている。
それにしても(僕を含む)おっさんたちはなぜ、「昔の体罰はもっとヒドかったぜ」と、少し前のめり気味に言いたがるのだろう。
やや古いデータで恐縮だが、インターネットメディア開発事業を営む株式会社ホワイトボックス(本社・福岡)が2018年に発表した、「学生時代の部活動の実態」に関するウェブアンケートの調査結果が興味深い。
調査対象は、20歳~59歳の男女100人(男35人、女65人)で、年代別の内訳は20代27人、30代29人、40代31人、50代13人となっている。
調査数が少ないし男女に偏りがあるので統計的価値は低いのかもしれないが、この少ないサンプルにおいても、体罰やパワハラに関する年代差が浮き彫りになっている。
「部活に体罰はあったか」という質問に、「あった」と答えた割合は以下の通り。
50代 46%
40代 35%
30代 34%
20代 19%
年代が下がるごとに減っていくことがわかる。
コンプラやポリコレ意識の高まりとともに、現代に近づくに従って体罰が減ってきているというのは、まあ想像に難くないことである。
一方で、「部活でパワハラはあったか」という問いに対し、「あった」と回答した割合は、体罰とは逆の傾向を示す。
50代 15%
40代 26%
30代 34%
20代 41%
年代が上がるごとに少なくなっていくのだ。
社会の趨勢に従って体罰が振るえなくなってきた分、言葉の暴力がひどくなっていったのだということが推測できる。
なんだ、“拳”が使えなくなった代わりに“言葉”を使っているだけで、暴力自体はなくなっていないじゃないかと思える。
そして、このアンケート調査でもっとも興味深いのは次の項目だ。
「部活中に受けた体罰やパワハラが今の自分にプラスになっていますか」との問いに対する年代別の回答は、以下の通り。
20代 プラスになっている0% マイナスにしかなっていない33% 影響はない67%
30代 プラスになっている3% マイナスにしかなっていない28% 影響はない69%
40代 プラスになっている13% マイナスにしかなっていない19% 影響はない68%
50代 プラスになっている15% マイナスにしかなっていない23% 影響はない62%
これを上記の体罰&パワハラの経験率に絡めて考えてみると、やや短絡的かもしれないが、以下のようなことが言えるのではないだろうか。
体罰を受けていた年代の人は「体罰経験はプラスになった」と考え、パワハラを受けていた年代の人は、「パワハラ経験はマイナスにしかなっていない」と考えている。
これが、体罰の報道を受けて誇らしげに自分の経験を語りたがるおっさんが、後を断たない理由かもしれない。