リードをつけた理由は「飛び出して事故にあわないように」
一連の事件では、修くんが体にヒモをつけられて外を歩かされたり、大声でしっ責される姿が頻繁に目撃される一方、沙喜容疑者らきょうだい全員が、かつて祖母から虐待を受けて育った可能性を♯1で報じたが、取材を進めるうちにその虐待の連鎖の詳細も浮き彫りになった。
司法解剖では、修くんが亡くなったのは遺体発見3日前の今月19日ごろだったこともわかった。刺し傷や骨折はなく、背中一面に皮下出血が広がっていた。「虐待死」につながるような一家の奇妙な日常の行動を、近くに住む50代の男性は見ていた。
「何年か前にあの一家が引っ越してきたのですが、最初は女性4人で生活していました。どの方がお母さんかというのは身ごもっていた時期に見て知っていたのでわかりました。生まれた子が小さいころは泣き声が聞こえるたびに、『泣くなっ泣くなっ』とすごい剣幕で怒鳴る女性の声が聞こえてきて、泣き方が疳(かん)の虫とかを通り越したレベルでした」
一時は当局への通報も頭によぎった男性だが、思いとどまった。そして季節は流れ、修くんは元気な男の子に育っていった。
「成長してからの男の子は、声をかけると何回かに一回は『はーい。おはよう』と返してくれました。しっかり育ったんだなと安心したし、可愛い子でしたよ。ところが去年の夏、お母さんが男の子に犬に使うリードのような縄をくくりつけ、本当に犬の散歩のように歩かせてるのを2度ほど見たんです。見かねた近所の方が事情を尋ねたところ、お母さんは『飛び出たりして事故にあわないように』と理由を説明されたそうです」
修くんは特に嫌がるふうもなく、普通に散歩していたというが、男性は奇異な印象を受けた。
「男の子のおばあちゃんにあたる女性を、双子の若い女性が支えるようにタクシーに乗せるのを何度か見かけたことがあります。その際に双子の女性は帽子を目深に被り、人目を避けるようにしていました。おばあちゃんは、高齢で認知症なのか、足が不自由で歩けないのかわかりませんが、体調が悪そうでした」