Aさんは2021年6月末に埼玉県内のホテルで40代の暴力団関係者B(別の事件で北海道網走刑務所に収監中)と会ったのを最後に失踪していた。また、遺体が発見された現場の土地はBの妻C氏が所有者で、同課は2人を含めた男女数人が事件に深く関与しているとみて調べている。
愛知県一宮市で母親と二人暮らしだったAさんは「仕事とライブを観に行く」と周囲に告げ、1カ月ほど東京に長期滞在する予定で、2021年6月25日に夜行バスに乗って上京。26日に吉祥寺で好きなバンドのライブを楽しんだ後、J R三鷹駅前のホテルに宿泊、27日にチェックアウトしたのを最後に行方不明になっていた。
〈秋田コンクリート女性遺体〉「スコップを持って男女4、5人が林に入っていった」土地を所有する出張リラクゼーション店経営の女性と風俗店店長は記者の直撃に…暴力団関係者が関与!?
愛知→東京→秋田。息子が必死で探した48歳母はなぜ、遺棄されたのか——。警視庁捜査1課は5月11日、秋田市内の雑木林で発見されたコンクリート詰めになった遺体を2年前に失踪した愛知県一宮市のAさん(当時48歳)と確認したと発表した。同課は行方不明捜査の過程で5月9日、秋田市金足下刈雨池の雑木林でコンクリートの詰まった箱を発見、中からこの女性とみられる変死体を見つけ、司法解剖するなど身元確認を急いでいた。
「母も必死だったんだと。咎めるつもりも軽蔑する気もありません」

捜索願いが出されていたAさん
東京で暮らしていた息子は、7月2日にAさんと会う予定だったが連絡がつかなかったため、警視庁小金井署に捜索願いを届け出るとともに、同月28日にはTwitterに捜索のためのアカウントを開設。女性の本名や顔写真、特徴などをアップし、広く情報提供を呼びかけた。
さらに9月10日には暴露系人気YouTuberに捜索を依頼し、ライブ配信にも参加。ここで「知人」からAさんが鶯谷と大宮に拠点がある熟女系風俗店に勤務していたという情報がもたらされた。Aさんは「サエキ」と名乗っていたという。
息子は母親の顔写真の載った「勤務表」などから本人と確認、「警察にも報告します」と手がかりを得たことに感謝し、翌日のTwitterでこう心境を明かしていた。
〈母子家庭の大変さは良く知っています。母も必死だったんだと。咎めるつもりも軽蔑する気もありません。寧ろ良くここまで頑張ったと。育ててくれて感謝しかありません〉(原文ママ)

捜索願いに描かれていたAさんのイラスト(Aさんの息子のSNSより)
それから1年9カ月後、Aさんの遺体は見つかった。衣服を着けたまま膝を折り曲げた状態で毛布のようなものに包まれ、低温で湿度が高い状態で長期間放置されていた場合に起きる「屍蝋化」が進んでいたという。
暴力団関係者Bの妻C氏を直撃すると…
現場はJR秋田駅の北約15キロにある住宅と雑木林の混在地で、登記簿謄本によるとC氏は、Aさんが失踪して半年後の同年12月27日に宅地3筆・計523平方メートルを購入していた。C氏は埼玉県内でリラクゼーション系の出張マッサージ店を経営し、「伝説のセラピスト」としても知られていた。
「BはAさんが勤務していた熟女系風俗店の客だったとみられ、Aさんは2021年6月末に埼玉県内のホテルでBと会った後に、風俗店とも連絡がつかなくなり失踪しています。そのころに何者かに殺害され、死体はコンクリート詰めされ、埼玉県内で保管されていたものの、異臭が気になったのでしょう。秋田市内の現場に埋めた時期は判然としませんが、遺体が発見されるのを防ぐためにわざわざ現場の土地を購入したとみられます。関与の度合いはわかりませんが、B が妻(C氏)と共謀している可能性が高い」(社会部記者)
集英社オンラインニュース班は5月11日午前8時ごろ、自宅アパートから出てきたC氏を直撃した。ウインドブレーカーのフードをすっぽりかぶり、メガネをかけ周囲を警戒した様子を見せていたC氏は、記者の姿を確認するとすぐに文庫本で顔を隠した。
その後、一緒に自宅アパートから出てきたC氏の弟とみられる男性と一緒に黄色い軽自動車に乗り込み、「秋田県の遺体遺棄事件についておうかがいさせてください」という記者の問いかけを無視したまま、自らの運転で走り去った。顔を隠していた文庫本はビクトルユーゴーの「ああ無情」だった。

C氏を直撃したが…(撮影/集英社オンライン)
同アパートはC氏が2016年当時運営していた出張リラクゼーション店の店舗としても登録されているが、住民がC氏の顔を見かけるようになったのは2年ほど前からだという。
「ここの家賃は6万円ぐらいです。女性はポメラニアンだったと思うけど小型犬を飼っていて、散歩の時によく会いました。最初は一緒にいる中年男性がご主人だと思っていたのですが、ご本人から『私は姉なんです』と後から聞ききました。女性は明るくて、人当たりのいい感じの人ですよ。決まったような時間に家を出ているので、何かしらの仕事をしていると思います」(近くの住民女性)

C氏の自宅(撮影・集英社オンライン)
ゴミでも埋めるかキャンプでもするのかなと思ってました
一方、遺体が発見された秋田市の現場では、2年前の夏ごろに不審な男女5人ぐらいがスコップなどを手に雑木林に入っていくところを目撃されていた。
近くに住む男性がこう証言する。
「あの土地はしばらく前からまったく手入れもされてなくて、ここら辺に住んでる人でもまず入ることはないです。森とまでは言えないけど、大きな林ぐらいの感覚ですから。
今年の1月くらいには警察が『不審な人や車を見ませんでしたか』と聞いて回ってきて、その時は思い出せなかったんだけど、2021年の9月頃に変な人たちが来てたんですよ。30〜40代の男女が5人くらい、まったく見覚えないからこの辺の人でないのは確かでした。草刈機やスコップを持って林に入っていったから、ゴミでも埋めるかキャンプでもするのかなと思ってました。その人たちが乗ってきたトラックは2週間くらいはあったので、さすがに怪しむ近隣の方もいて、様子を見た人によると縦横1メートル以上はある大きい穴が掘られていたそうです。
最近になって警察がチェーンソーや重機を使って掘り起こしにきて、私も近隣の方々もようやくあの夏に変な連中が来ていたことを思い出したんです。今思えばあの時にちゃんと通報していればよかったですね」

遺体が発見された秋田市内のC氏の敷地
警視庁の捜索は5月7日に始まったという。
近くの住人女性はこう話した。
「7日の午後から警察の人たちが何人も集まって準備を始めて、8日の朝から重機とか使って掘り起こしてました。8日は雨も降ってたんで、かなり大変だったんでしょう。20人近い警察官が動き回って、みんな腰あたりまで泥だらけだったのでかなり深く掘ってるんだなと思いました。誰も入らない林だし、この辺りは静かなところだから、一体何があったんだろうと近隣の人達もざわついていました」
Aさんがかつて勤務していた風俗店の関係者にも話を聞くことができ、在籍していたことは確認できたが、すでにスタッフが全員入れ替わっていて当時の状況はよくわからないという。
「警察からは半年以上かけて彼女が担当したお客さんのことを尋ねられました。名前や詳細は言えませんが、その中の1人の男性については怪しまれているような雰囲気はありました。その人が暴力団関係者とかそういうのはまったく知りませんし、その人が彼女ともともと何か繋がりがあったのか、たまたま呼んだのかもわからないんですが、その人はおそらく初めての利用だったと思います」
最愛の母を奪われた息子の執念が、冷たい土の中で眠る母を見つけたのは間違いない。事件の早期全面解決を願うばかりだ。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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