免疫力という言葉は医療用語にはない

免疫とはざっくり言うと体内に侵入した細菌やウイルスを攻撃する防御システムのことですが、免疫力という言葉は医学用語にはありません。

免疫力については、血液や尿検査などの結果で数値化されていないのです。なので、医者同士で「あの患者さんは免疫力3だから、入院だ」「免疫力が100に上がった」などのやりとりはもちろんしません。医学生時代の教科書にも免疫力と書かれた記述はありませんでした。

ただ、「免疫力を上げる食事」「免疫力を高める生活習慣」などの情報は本当によく目にします。免疫力という言葉は医学用語にはないのに、これほど一般的に浸透しているのは皆さんの実体験によってわかりやすく解釈されているからだと思います。

例えば、仕事や学校で忙しくて睡眠不足に陥って体調が悪くなった時や、部活動などハードな練習の後に風邪を引いてしまった場合、「免疫力が落ち気味」「免疫力が弱った」などと使われることがあると思います。

皆さんが実感しているように人間の体は、睡眠不足、ハードなトレーニング、人間関係のもめごとなど、さまざまなストレス負荷がかかることで、風邪を引きやすくなるという事実があります。

風邪を引きやすいということはウイルスに罹患しやすいということで、これを皆さんは「免疫力の低下」と捉えているようです。

医者の立場では医学用語ではない「免疫力」という言葉を使うのは躊躇しますが、今回は、風邪を引きやすい状況→ウイルスに罹患しやすいことを仮に「免疫力の低下」として、さまざまな免疫力の都市伝説について解説していきたいと思います。

「体温が上がると風邪を引かない」はウソ? 免疫力の都市伝説7選_1
さまざまなストレス負荷で風邪を引きやすい状態に陥る