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悲恋物語を経て、ハッピーエンドが目立つ
平成後期の不倫ドラマを振り返る

拙著『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)では「ドラマ不倫今昔」という見出しで文章を綴った。思い返すと平成は、不倫ドラマが本当に多かった。浮気は悲恋というよりは、男の勲章だったイメージが強い。

そして元号は変わり、令和となった今、放送される不倫ドラマの数は格段に減った。平成前期においては、人間関係がドロドロとした作品が多く放送されていたけれど、いつの間にかそういった作品は存在が薄くなっている。何かと多方面から揶揄が飛んでくる時代なので、減少傾向にあるのだろう。

ただどんなにコンプラが成長しようと色恋沙汰によるすったもんだは、皆の大好物であることは間違いない。それがスキャンダル、創作に関わらず、倫理に違反することとは心の甘味。では最近の不倫ドラマの傾向はどのように変化しているのだろうか? 

ヒロインは盾を持つように強くなり、
恋のイニシアチブを握った

私が平成後期から現在にかけて、不倫ドラマが変わったと思う節がいくつかある。まずは「ヒロインが強くなったこと」。1998年の『スウィート・シーズン』(TBS系列)あたりまでは、既婚男性を好きになる独身女性が、愛する彼になかなか会うことができず、ひっそりと泣いていた。

それが2010年放送の『セカンドバージン』(NHK総合)での、ヒロインの中村るい(鈴木京香)は簡単には泣かない。不慮の事件に巻き込まれて、愛する相手が亡くなっても「仕事をしよう!」と奮起していた。そう、女性が仕事を持つことに誇りと生きがいを持つようになったことが影響を及ぼしている。

令和に放送された『恋する母たち』(TBS系列・2020年)では、母たち全員が自立していた。特に林優子(吉田羊)は年下の部下と結ばれて、夫と離婚をしても生活に支障はなし……というところが格好良さに拍車をかけた。

『シジュウカラ』(テレビ東京系列・2022年)も、漫画家の才能を伸ばして、面倒な夫を捨てて自立していくヒロイン・綿貫忍(山口紗弥加)がいた。夫以外に好きになった相手は20才近く年下のアシスタント。少し前までは、女性が地位と名誉を持って仕事をして、年下の男性と恋に落ちると「いつか捨てられるよ」「すぐに若い女のほうがよくなっちゃうから」と噂されることが多かった。もうそんな噂もどこ吹く風の時代が来ている。恋愛を放棄するのは女性側だ。