――お二人がカップル/夫婦チャンネルを始めた理由を教えてください。
ナカモトダイスケ(以下ダイスケ) 「この人生で何か一つを極めるとしたら?」と考えたのがきっかけでした。
というのも、当時、写真スタジオを経営していて数字的には上手くいっていたんですけど、写真を続ける事が精神的に辛くなってしまって、一度立ち止まって考えたんです。
そこで自分の価値観として、夫婦や家族に対するウェイトが写真よりも重いことに気がついて「……家族や夫婦って、極めたらどうなるんだろう?」とふと思い、当時少なかった夫婦チャンネル(カップルチャンネル)を始めようと考えました。

「カップルYouTuberは本当に難しい」人気夫婦YouTuberが明かす、それでも動画をつくる理由
YouTubeの中でも老若男女問わず幅広い層から熱い支持を集めているのが、カップルで運営する「カップル系チャンネル」だ。ドッキリネタから、デートや日常生活を記録したVLOG(※映像によるブログ)、人生相談など、その中身は幅広いが、多くは恋愛の疑似体験が一つの魅力となっているようだ。人気の夫婦YouTuber「ナカモトフウフ」の二人に話を伺った。
「“夫婦”を極めたら、どうなる?」
YouTubeチャンネルを始めた動機

「ナカモトフウフのOkinawa Life Vlog」(以下、ナカモトフウフ)を運営する、妻・ちゃんまり(左)さん、夫・ナカモトダイスケ(右)さん。写真・カメラ系チャンネル「サンセットスタジオTV」を運営していたが活動停止。新たに「ナカモトフウフ」を立ち上げた
――家族や夫婦を“極める対象”として考えるのはおもしろいですね。
ダイスケ もちろんビジネス的なメリットも大きかったです。当時カップルチャンネルはあまり数がなく、その中でも夫婦チャンネルは片手で数えられる程度しかなかったので、ブルーオーシャンを発見したと思いました。
そして、当時日本一のカップルチャンネルをやっている方々と友だちだったのですが、彼らのもとに集まっている案件(※スポンサーからの動画制作依頼)の豊富さも魅力的だなと思いましたね。
ちゃんまり その方たちが「お二人ならカップルチャンネルで行けると思いますよ」と言ってくれていたのも大きかったですね。
ダイスケ ちなみに、彼らのチャンネルはその後なくなってしまったんですけどね……。
――えっ!?
ダイスケ まぁ、これがカップルチャンネルの「難しいところ」なんですよ。
カップルチャンネルは、結ばれるはずだった恋人同士をも別れさせる
ナカモトフウフによる600万再生を超える大ヒット動画

――「自分たちもカップルチャンネル始めたいんです」って人に言われたらどうしますか?
ダイスケ 実際たくさん言われるんですけど、オススメは……しないですね。僕は(笑)。
ちゃんまり (笑)。
ダイスケ 言い方はよくないけど、大体別れるので……。というのも、カップルチャンネルは別れるリスクがめちゃめちゃ高まるんですよ。
ちゃんまり うん、そうだね(笑)。
――どうしてですか?
ダイスケ 数字が伸びないと、客観的に自分たちカップルに価値がないと否定され続けてるような気持ちで日々を送ることになってしまうんです。
――あー……。
ダイスケ YouTube上の数字を追うのに疲弊して、「もっとこうすればもっとよくなるのに!」「そんな事わかってるよ!」みたいな小競り合いの喧嘩が増えるんですよ。
本当はゆっくりと自分たちのペースで愛を育んでいけば結婚までいくはずだったカップルでも、YouTubeを始めたことによって「早くカタチにしないといけない」と空回りして、別れる確率は飛躍的に上がってしまうっていう……。
――うわぁ……。めちゃくちゃリアルですね(苦笑)。
ダイスケ なので、カップルチャンネルはあまりオススメしないですね。やるとしたら、夫婦になってから始めるのがいいと思います。
もっと理想を言えば、子供ができてから。……どちらにせよ、二人をつなぎとめる何かができてからの方がいいかなと思います。

「ナカモトフウフ」の魅力の一つが、沖縄の美しい景色。二人が現在拠点とする沖縄県北谷町にて
――安定したチャンネル運営には、結婚という“契約”、あるいは子供という“かすがい”が必要、というわけですね。
ダイスケ そういうのがないとなかなか難しいと思います。何十万人もの登録者がいるチャンネルでも、みんな当たり前のようにバタバタ別れてやめてしまってますから。
ちゃんまり 去年から今年にかけて、そういうの立て続いたよね。
ダイスケ コロナになってから本当に増えましたね。僕らも外出自粛で外に出られなくなった時期はストレスが溜まってすごく大変でした。
ちゃんまり 喧嘩してる状態でも、仕事だから動画を撮らなきゃいけないので、そこでさらにギスギスしたり……。
ダイスケ 特にギスギス期に案件が入っていたらキツイよね。数時間前まで喧嘩してたのに、翌日は笑顔で撮っているっていう。本当に精神的にキツい時はありますよ(笑)
――「恋人を演じてる」感じになっちゃいますもんね。
ダイスケ そうです。そしてそんな自分達に自己嫌悪に陥ってしまう。カップルチャンネルは案件数が比較的多い反面、そういう局面で相当な精神力が要求されますね。側から見て「ああ、いいな。二人で仲良くしているだけで、こんなにお金稼げるなんて」と思う人も多いと思いますけど、やってみると本当、感覚を掴むまでは大変です(笑)。
ちゃんまり 事務所に入ってると契約も絡んでくるから、別れたのをひた隠しにして続けてる人たちも少なくないです。
ダイスケ その状況って精神的に大丈夫なのかな?って心配しちゃいますけど。
――ちゃんまりさんも世の恋人たちにカップルチャンネルはおすすめしないですか?
ちゃんまり 無条件には勧められないですね。
ダイスケ カップルチャンネルをやってみたい人は、まずTikTokなどの気軽なSNSを始めるくらいがいいと思います。TikTokなら流行りの音楽に乗せて二人で踊るだけとかでも成り立つし、マネタイズがメインではなくあくまでSNSなので。そこでジャブを打ってみて、それが1年続いて、楽しいと思えるならYouTubeを考えてみてもいいかと思います。

カップルチャンネルのメリットは
「二人の目標」と「思い出が映像に残ること」
――写真系チャンネルをやめて夫婦チャンネルを始めて、周りの反応は変わりましたか?
ダイスケ 広く「YouTuber」という認識みたいなので、特に変わらないですね。でも、やってる本人としてはちょっと照れくさい部分はありますよ。この前も、キックボクシングジムに行ったら「ダイスケさん、この前のサウナ目当てでラブホ行った回なんですけど……」とか言われて(笑)。毎週顔合わせる人にそういうこと言われると、ちょっと照れますね。
ちゃんまり 知らない人より身近な人に観られてる方が恥ずかしいよね。(笑)。
――カップルチャンネルを始めて、自分たちが変わったと感じることはありますか?
ダイスケ 夫婦の強度、夫婦としての強さが増しましたね。夫婦で何かに挑むっていうときの、判断の速度や結束の強さがものすごく高まったと感じます。それは動画の中でも、外でも。
ちゃんまり そうだね。夫婦の一体感が増したと思う。
ダイスケ そして自堕落なことをしなくなりました。YouTubeを通して、家の中のことから外出のことまで世の中に見られてる状況じゃないですか。だから、お皿を洗わないで溜めるとか、出したものを片付けないとか、絶対しないです。いつ見られてるかわからないから、しっかり自分たちを整えることができるようになりました。
――それはカップルチャンネルの大きなメリットですね。
ダイスケ そうだと思います。YouTuberをやっていなかったら蓋をできたこともいっぱいあったけど、蓋をできない環境でやってきたことが、強制的に自分たち夫婦を強くしたと思います。そういうのも含めて考えれば、カップル/夫婦チャンネルをやってよかったなと思いますね。
――再生数やチャンネル登録数を伸ばすといった、夫婦が共通の目標を持てるのは良いかもしれないですね。
お二人 あー。
ダイスケ 確かにそれはものすごくあると思いますね。毎日一緒に数字を見て「動画が急上昇に載った」「視聴者さんが喜ぶ動画を作れた!」とか言ってハイタッチして喜んだりとか。そういうイベントが毎週あるので。
――普通のカップルや夫婦って、共通の目標を持っていることはあまりないですもんね。
ダイスケ 共通の目標を持てるというのは、新しい生き方なのかもしれないですね。毎月二人で努力して何かに向かっていると、夫婦の強度がどんどん上がっていって、戦友でもあり恋人でもある不思議な感じになってきますよ。
ちゃんまり あと、私が夫婦チャンネルをやっていてよかったと思うのは、二人の思い出が綺麗な映像として残っていくことですね。
旅行に行ってその時は楽しくても、結構忘れちゃうじゃないですか。でも、それを一本の映像として残していると、見返すと自分たちのその時の気持ちも思い出せるんですよ。
ダイスケ 自分達が作った動画が、老後に自分たちで見返したいと思える動画なのかっていうのは一つのテーマだよね。人生のハイライトをちゃんと映像と音で記録しておくというか。今日という日を綺麗にまとめて未来に残し続けるのと、財産になりますからね。
――一般の方でもスマホやカメラで動画を撮っている人はたくさんいても、それを編集している人はほとんどいないですよね。
ダイスケ 動画編集、すごく楽しいですよ。二人の思い出をしっかりまとめておくというのは、趣味としてもかなりいいと思います。YouTubeに公開するしないを別として、月に一本でも「今月の動画」を作ってみるのは広くおすすめしたいですね。
取材・文・撮影/照沼健太
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