どんなキャラクターも演じ分ける“北欧の至宝”

「ジョニー・デップの模倣はしたくなかった」――。映画『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』で“新グリンデルバルド”を作り上げたマッツ・ミケルセンの胸中_a
AP/アフロ

確かな演技力と唯一無二の個性。“北欧の至宝”とまで呼ばれるデンマークの名優マッツ・ミケルセンの演技力の幅は驚くほど広く、サイコな殺人鬼から生真面目な先生、さらにはファンタジーの住人まで、どんな役であっても自分のものにしてしまう。

インターナショナルなアクターになったきっかけは、『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)のヴィラン。涙腺の異常から赤い涙を流すという設定が、彼の硬質な表情をドラマチックに変えて強烈な印象を残した。その後、あの殺人鬼・ハンニバル・レクターを演じたTVシリーズ『ハンニバル』(13~15)で大ブレイク。サイコなドクターをエレガントかつデンジャラスに演じていた。

この2作品をジャンピングボードにして、マーベルのスーパーヒーロー映画『ドクター・ストレンジ』(16)や、『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)等のブロックバスター映画にも出演。
その一方で、母国デンマークの映画にもたびたび顔を出し、昨年のアカデミー賞で国際長編映画賞に輝いた『アナザーラウンド』(20)では主演を務め、お酒を飲んで(!)人生を建て直そうとする高校教師を楽しく演じていた。たとえインターナショナルな人気者になっても決して母国を忘れない。それも彼の大きな魅力のひとつである。

そんな彼が、人気シリーズの3作目『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』で闇の魔法使い・グリンデルバルドをジョニー・デップから引き継いで演じたことが話題だ。ジュード・ロウ演じるダンブルドアとかつて友情を超えた強い絆で結ばれながらも、袂を分かち、目的を叶えるために手段を選ばない魔法使いになったグリンデルバルドを、邪悪に、かつセクシーに演じている。ともすればファンから批判を受けかねない難役に挑戦した、名優の覚悟と凄みとはーー。