スペイン語圏最大規模の映画祭

スペインのリゾート地で金目鯛の炊き込みご飯を堪能!? 美食の街サンセバスチャンのグルマンな映画祭_01
川村元気監督(左)は『百花』(2022)で最優秀監督賞を受賞。主演の原田美枝子(右)も映画祭に参加した
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ミシュラン星付きレストランが多数点在していることから「美食の街」と称されるサンセバスチャン。ビスケー湾に面した風光明媚な景色に惹かれ、スペイン王室が避暑地として訪れていたほど人気のリゾート地だ。日本でも最近はバスクチーズケーキの本場として、サッカー日本代表の久保建英が所属するラ・リーガ・レアル・ソシエダを擁する街として知られるようになった。

年間を通じたカルチャーイベントも多彩で、筆頭が毎年9月に開催されるサンセバスチャン国際映画祭。今年は9月16日〜24日に開催された。人口約18万8000人の街に、会期中は17万5000人(2018)が訪れる。スペイン、いやスペイン語圏最大規模の映画祭だ。

設立は1953年。以来、バスクを激しく弾圧したフランコ政権時代も、多くの国際映画祭がオンラインに切り替えざるをえなかったコロナ禍も、歴史を途切れさせることなくリアル開催して今年で70回。国際映画祭ならではの華やかな一面も、コンペティション部門のピリッとした緊張感もあるものの、穏やかな街の雰囲気も手伝って、どこか牧歌的な雰囲気が漂う。

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これまで何度も映画祭に参加している是枝裕和監督。2018年には生涯功労賞にあたるドノスティアを受賞した
© Gorka Estrada

その象徴が、スターとの距離の近さ。彼らの宿泊先もホテル到着時間も公表されており、ホテル前には出待ちファン用の待機スペースまで設置されている。誰もがジョニー・デップやヒュー・ジャックマンらと気軽に触れ合えるのだ。

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人で賑わう上映会場前。車椅子利用者や杖を付いた人がどの会場にもいるのがサンセバスチャンでは見慣れた光景(撮影:中山治美)

国際映画祭とは思えぬこの敷居の低さは、観客層を見れば一目瞭然。映画を学ぶ学生やフツーの地元住民が圧倒的多数で、車椅子利用者や杖をついた人の姿を、どの会場でも見かける。これはスポサンサーになっている地元銀行のカードで決済すると、チケット料金が50%引きになるなどの各種割引サービスが充実しているため。街を上げてのアクセシビリティの整備ももちろんだが、観客と映画を繋げるための運営方針が際立っているのだ。

例えば、本映画祭のいまや看板プログラムとなっている、料理をテーマにした映画を集めたキュリナリー・シネマ部門。実はこちら、教育も兼ねている。