『男役』だから、こんな自分でも輝くことができた

デビューからおよそ半世紀となる大ベテランながら、現在も精力的にステージに立ち、羽のように軽やかなしぐさで女性を魅了する汀さん。汀さんにとって宝塚の「男役」は、自分を輝かせてくれた、アイデンティティのようなものだという。


 中学1年生ではじめて宝塚歌劇を見た時から、コレや!と思ってました。背が低いから男役はムリや、と言われたこともありましたが、美人でもなく、歌もうまいわけでもない自分が、男役なら舞台で輝けるんです。ほんまに天職や思うてます。コロナの影響で、みなさんとお会いできない時期が続き、「あれは夢だったんかなー」なんて思ったりしていましたが、お客様と顔を合わせ、喜んでいただけるのがなによりうれしいんです。今でも、踊りのお稽古は続けていますよ。


身長163cmの汀さんは、『ベルサイユのばら』で組んだ後輩で、アンドレ役の麻実れいさんとおよそ9㎝ほど身長差がある。

男役が演じるけど男ではないのがオスカルの難しさ。汀夏子が振り返る宝塚のベルばら_1
「ベルサイユのばら 集英社完全版7」口絵。新規カラーが美しい
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 身長に差があったから、オスカルとアンドレ、私と麻美さんが並んだとき、「絵」になったんだと思います。ほら、見た目のイメージってあるじゃない? そういう意味でも、あの時オスカル役を演じられたのは幸運でした。オスカル役のおかげで、今でも私を覚えていてくださる方がいて、ステージにあがる機会につながるわけですからね。