「あなたはあなたの人生、僕は僕の人生」俳優・佐藤寛太の恋愛観

ドラマ『結婚するって、本当ですか』が10月7日よりPrime Videoにて独占配信される。「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載されている若木民喜による同名漫画を原作とした本作は、旅行代理店で働く本城寺莉香（葵わかな）と大原拓也（佐藤寛太）が、お互いの自由な1人生活を守るために偽装結婚をするラブコメディだ。

今回は、保護猫との気ままな生活を楽しむ大原拓也を演じた佐藤寛太にインタビュー。同作への思いや恋愛観、自身の理想とする俳優像を聞いた。

――今回演じた大原拓也と佐藤さんで似ているポイントはありますか？

性格は180度逆だなと感じました。でも自分と通じるところ、共感できるポイントが多かったから、演じる上で難しいとは思わなかったです。

――共感した部分とは具体的にはどういったところでしょう？

どこがと言われると難しいんですが……、一歩踏み出そうと思うんだけど今自分が行かなくてもいいかなと思ったり、人任せにしちゃったり、そういうところですかね。周りの人のことはしっかり見ているというのも共通点かもしれないです。

――「計画結婚」がテーマの作品だと、仮面夫婦にもなりがちだと思うのですが、本作の拓也と莉香（葵わかな）はお互いを知ろうとしているのが印象的です。

同じ家に暮らすのに、相手に興味がないって結構きついですよね。ドラマの作中、2人が接近するシーンがいくつかありますが、知ろうとすることは相手に好意を持つための第一歩だなと感じました。気を遣えるのも、相手のことを思っているからこそですし、それがなかったら何も始まらないですもんね。

――2人とも自分ファーストなスタンスのわりに、お互いのことをちゃんと思い合っていますね。

自分に踏み込まれたくない領域があるから、人のことも慮って優しさを働かせられるのかなと思います。例えば、僕が演じた拓也は保護猫を大事にしているのですが、莉香さんも拓也と同じように大事に扱ってくれるんですよ。そういうのって大事だなと演じながら思いました。

自分が大事に思っているものを、大切に扱おうとしてくれる。理解してもらったり、一緒に好きになってもらったりしなくてもいいけど、許し合えるのがいいですね。

――結婚＝四六時中一緒にいることと考えがちですが、新しい形として共感を生みそうです。

あなたはあなたの人生、僕は僕の人生でいいと思います。もちろんそれが重なるところで素敵な経験をすることもあるでしょうしね。

――佐藤さんの恋愛観について、もう少し聞かせてください。好意を持った相手には積極的にいくタイプですか？

積極的ですね。気になったら絶対自分から行きます。あんまり待つことはしないかもしれないです。

――どんな風に関係性を縮めていくことが多いですか？

これは恋愛関係だけでなく友達にもいえることなのですが、これからも仲良くしたいなと思う方がいたら、連絡先を聞いてご飯に誘います。恋愛もその延長にあるだけ。

――ファーストインプレッションで判断していくことが多いんですね。

そうですね。友達や知り合いだったところから恋愛に発展した経験はないです。判断ポイントは顔っていうとおもしろいんでしょうけど（笑）、実際には一瞬の引っ掛かりみたいなものですね。趣味がひとつでもかぶっていたりとか。話していて共通点が見つかると、好意を抱くポイントにつながる気がします。

だからと言って、自分がアウトドアな人間だからアウトドアの人じゃなきゃ嫌、ということは全然ないですけどね。相手がインドアなら休日は別々に過ごしましょうとなるし、もし僕の趣味のキャンプに一緒に来てくれるなら教える。同じように相手の興味のあるものなら僕も興味を持つと思います。結局は人として感性や話が合うかどうかだと思います。お互いに自分の人生を楽しめているのが理想ですね。

――先ほど拓也との共通点として周囲の人のことを結構観察するとおっしゃっていましたが、佐藤さんはどんなところを見ているんでしょうか？

気になる子をチラチラ見るというのもありますが、その場にいるみんながなるべく分け隔てなく話せるような雰囲気を作りたいなと思い「何か気になっていることはないかな」「嫌じゃなかったかな」と見てしまいます。実際、よく見ているねと言われることも多いですし、髪型の変化とかにも気付くタイプです。

――それはもともとの佐藤さんの気質なんですかね。

わかんないです。学生時代に読んでいた少女漫画に「髪を切ったことに気づくほうがモテる」って書いてあったのかも（笑）。

――少女漫画を読まれるんですね！　印象深い作品はありますか？

実写映画に出させていただいた『ヒミツのアイちゃん』はもともと読んでいましたし、『となりの怪物くん』や『ストロボエッジ』、『君に届け』なんかも読んでいました。あの時代に流行っていたものはほとんど読んでいると思います。今でも絵が気になったら少女漫画でも普通に手に取りますよ。線の細い綺麗な絵が好きなんですよね。

――子どもの頃はあまりテレビを観ていなかったそうですが、今ご自身はそのテレビの中で大活躍されています。

よく知っていますね！（笑）　テレビ観ないんですよ、今も。子どものときにそういうふうに育ったからだとは思うのですが、未だにテレビをつけっぱなしにする習慣がないんですよね。自宅の家具の配置的に、テレビ線が届かないということもあって、リアルタイムで観ることを諦めているというのもあるんですがね（笑）。

でもこの間、友達の家で自分が出ているドラマのCMが流れて、「うわ！　俺、今、地上波のドラマに出てる！」と久々にワクワクしました。

――最近だと『テッパチ！』の第一部に荒井竜次役で出演されていた佐藤さん。第一部の最終回で、荒井があんなに泣くとは、想定外でした。

ありがとうございます。結構漫画っぽい展開もあるドラマですが、ドラマの中でみんなと青春を走り切れてよかったなと思います。

実は第一部の最終話は北村（一輝）さんがオリジナルでセリフを作っていて……あんなの無理ですよ（笑）。僕の役はもともとあぶれ者みたいな感じだったのですが、北村さんがほかのメンバーにかけている言葉がすごく響いちゃって。なんて愛の深い人なんだろうって。もうあれは荒井ではなく自分です。素でした。

――『テッパチ！』で改めて佐藤さんを知った人も多い流れで、『結婚するって本当ですか』では葵わかなさんと共演する佐藤さん。今年は飛躍の年なのではと思うのですが、ご本人としてはいかがですか？

いやいや、もうこれからは山に登って静かに暮らしたいです。今年の夏は暑いし、そんな時期にあんなに熱い作品を撮ってきつかったので、しばらくお休みさせていただこうかな。全然期待と違う答えですみません（笑）。

――では、今後はのんびりしつつですかね。

そうですね。心動く台本で、心動くキャストやスタッフさんとお仕事したいですし、この仕事やってよかったなって思う作品を残していきたいという気持ちはあります。でも「こういう俳優になってどういうふうに売れたい！」とか「どんな作品に出たい！」とか強く思っているわけではないです。

もちろんご一緒してみたい監督さんはいるけど、そこは運。僕は役者という仕事をしていますが、仕事だけが人生ではないので、普通に生きていければいいのかなって思います。

――最後に『結婚するって本当ですか』を観る方にメッセージをお願いします。

この作品は、普通の2人が自分のことを一番に考えながら道を探していくストーリーです。自分たちでは気づいてないけど、世界には色が溢れているということが、RPGのようなミュージックやかっこいい主題歌、綺麗な景色、衣装や美術で表現されています。完成度が高い作品になっていると思うので、ぜひ最後までこの世界観を楽しんでください！

取材・文／あまのさき
撮影／小川遼　スタイリスト／Masahiro Hiramatsu