1匹の蛸から自然の尊さを学ぶ

人付き合いのコツをタコから学ぶ!?『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』_1
Everett Collection/アフロ

みなさま、こんにちは。ヨガ講師やセラピストなど女性のカラダとこころの健康にまつわる活動をしている、仁平美香です。

シリーズコラム第6回は、Netflixオリジナルドキュメンタリー『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』(2020)を紹介します。友人から教えてもらった作品で、原題の『My octopus teacher』というタイトルをはじめて聞いたときは、「蛸先生???」とイメージすら湧かずにいたのですが、生き物やそれらを育む自然の緻密さ、尊さに心震え、好きだった蛸を全く食べる気になれなくなったほどです。

映像作家のクレイグ・フォスターは、働きづめで何カ月も眠れなくなり、心身ともに疲れ果てていました。大好きな撮影もしたくなくなり、思い通りにいかない日々。現状を変えたいと願い、頭をよぎったのは子供の頃に潜った生物相豊かなアフリカの荒海と、そこで暮らすカラハリ族の自然と調和した生活でした。
そして、荒海に潜って自分を取り戻す探索の日々が始まります。

海の中にはケルプ(巨大なコンブ)が生い茂っていて、さながら森のよう。海や空、海中に差し込む光などがとても美しく、まずは映像に引き込まれます。
私自身、自然の中、そして水に体を委ねることで、体だけでなく頭の力もすーっと力が抜ける感覚が好きなので、一緒に海の中を泳いでいる気分でみていました。

クレイグは美しい海の中に身を置くことで、体やこころが徐々にほどけていき、撮影意欲をとり戻していきます。そんな中、貝殻を体中につけて丸くなる、奇妙な姿をした1匹のメスの蛸に出会って興味をひかれ、毎日欠かさず撮影することに。

はじめのうちは明らかにクレイグを恐れていた蛸でしたが、出会いから1カ月近く経ったころ、巣穴を出てクレイグに「手」を伸ばします。
警戒心の強い野生の生き物が人間に心を開き始めたことで、クレイグの真摯な態度や辛抱強く待つ姿勢が実を結んだのだと、驚きとともに感じられた瞬間でした。