展覧会では『ウイングマン』『電影少女』『I"s』『ZETMAN』といった桂先生の漫画作品のイラストだけでなく、アニメやゲームのキャラクターデザインや、著名人を描いたイラスト、衣装デザインなど様々な作品が200点以上展示されている。

桂正和〜キャラクターデザインの世界展〜『電影少女』『I"s』『TIGER & BUNNY』など200点以上が展示!
2022年4月27日(水)~5月8日(日)に漫画家・桂正和先生の画業40周年を記念した展覧会「40th Anniversary 桂正和〜キャラクターデザインの世界展〜」が開催されている。本記事では、展覧会の詳細と桂先生も登壇されたトークの内容をお届けする。
5つの世界からなる桂正和ワールド

展覧会は5つのエリアに分かれており、それぞれ特色を持っている。
・代名詞とも言えるヒロインたちを振り返る「水色の世界」
・もう一つ代名詞である、ヒーローたちに焦点を当てた「黒色の世界」
・衣装設定、デザイン画、実際の衣装が展示してある「緑色の世界」
・キャラクターデザイナー・イラストレーターとしての一面に迫る「白色の世界」
・『TIGER & BUNNY』のイラストやフィギュアなどが展示されている「黄緑とピンク色の世界」
また、会場の物販ではヒロインが描かれたキャラファイングラフ(複製画)や、『電影少女』『I"s』のスケートボードデッキなど、原作イラストを使用したグッズが多数販売されている。
見ごたえのある展覧会のほんの一部になるが、展示をピックアップしてレポートする。
可愛いヒロインと力強いヒーロー

『I"s』 コミックス7巻 表紙

『I"s』 2006年 週刊ヤングジャンプ 4・5号合併号袋とじ
最初のエリアは、桂先生の作品に登場するヒロインたちを振り返る「水色の世界」。『I"s』のヒロイン・葦月伊織(よしづき いおり)をはじめ、桂先生が描く可愛くて美しいヒロインたちのイラストが多数展示されているエリアだ。思わず見惚れてしまうヒロインのイラストの数々は、このエリアだけでも「展覧会に来て良かった」と心を満たしてくれる。

また、各エリアごとに掲出された桂先生のコメントも大きな見どころとなっている。「水色の世界」では、『電影少女』や『I"s』に関連するコメントが掲出されているが、ここでは『電影少女』のコメントを一部紹介する。
「“プレゼント・フロム LEMON”の頃から、人物もリアル方向に描きたい欲が出てきまして、この電影少女でさらにまとめていった感じです。
理想の形にはなりませんでしたが。
目尻を鍵型に表現したり、鼻を影で表現したり、色々四苦八苦しております。
とにかく、漫画絵より人間の顔の方が美しく面白いと、強く思っていた頃なので。
衣装ですが、当時とても和風テイストにハマってまして、それが前面に出ていますね。
和風をSFテイストに変換させるのは、とても楽しかったです」
桂先生の制作当時の思いや、今振り返ってみてどう思うかなど、ここでしか読むことのできないコメントがあることも本展覧会の特徴だ。特に、『TIGER & BUNNY』のエリアでは、熱い思いを綴った読みごたえのある長文のコメントが掲出されているので、会場で熟読してほしい。
続いてのエリアは、ヒーローたちに焦点を当てた「黒色の世界」。ここでは、イラストだけでなく、桂先生私物の「ウイングマン頭部」など立体物も複数展示されている。

『週刊ヤングジャンプ』連載の『ZETMAN』の未発表イラストも公開

「夢戦士ウイングマン-FINAL-不滅のヒーローソング」ポスター

(左)『ZETMAN』コミックス14巻 表紙 (右)2010年 『週刊ヤングジャンプ』20号 扉絵

桂先生私物の「ウイングマン頭部」
「黒の世界」では、ヒロインに魅了される「水色の世界」とは打って変わって、桂先生が描く、力強いヒーローや軽やかなヒーローたちを堪能できた。
衣装デザインへの飽くなきこだわり
3つ目のエリアとなる「緑色の世界」では、衣装設定、デザイン、衣装の鑑賞が楽しめる。このエリアで特に注目なのは『I"s』の制服だ。

実写版『I"s』 女子制服冬用
『I"s』の制服は、元々「普通の制服は描かないと決めていた」そうで、「『週刊少年ジャンプ』でミニスカートとニーソックスを制服にしたのはたぶんはじめて」だと明かしている。
そんな制服をリアルな衣装で見られる機会なので、ぜひ実物を見て欲しい。
また、「緑色の世界」では人気コスプレイヤー・えなこの写真集のために描き起こされたデザインと実際の衣装も展示されている。デザイン画と実際の衣装を見比べられる展示となっているので、制作の工程を垣間見ることができて、桂先生の細部へのこだわりを感じられる。

えなこ特注のコスプレ衣装
他にもアニメやゲームのキャラクターデザインのイラストや、乃木坂46のメンバーの似顔絵などが展示されている「白色の世界」、エリアが丸ごと『TIGER & BUNNY』の世界になっている「黄緑とピンク色の世界」もある。
「黄緑とピンク色の世界」では、Netflixで配信中の『TIGER & BUNNY 2』のキャラクターデザイン、等身大のワイルドタイガーとバーナビー・ブルックス Jr.の新ヒーロースーツ「Style 3」も展示されている。会場で最も広いスペースが割かれているので、桂先生を『TIGER & BUNNY』から知ったファンも楽しめる内容となっているはずだ。
さらに、展覧会の出口には物販コーナーを併設。桂先生の原作イラストを使用したグッズが多数販売されている。特に注目なのが、キャラファイングラフ(複製画)やキャラファインアクリル、キャラファインボード。いずれも魅力的だった。
受注生産のグッズの受付もあり、中でも『電影少女』と『I"s』のスケートボードデッキはずっと見つめてしまうほどの存在感を放っていた。
どうしてこんなに可愛いキャラクターを生み出せるのか!?
展示会に先がけて26日(火)に行われたトークショーでは、桂先生と人気コスプレイヤーの伊織もえ、よきゅーんが登壇。一問一答形式で30分ほどのトークショーが開催された。

よきゅーん、桂正和、伊織もえ
桂先生はトークショーの中で、キャラクターデザインの意外な創作秘話を公開して会場を驚かせた。
「(『I"s』は)SFのない漫画にしてくれと言われたので、王道の恋愛を書こうと思った。そこで、自分が想像できうる万人にウケる女子を描いた。でも、 (ヒロインの葦月伊織は)嫌い。っていうか、人として面白くない」
「かの“ドクターマシリト(初代担当編集者の鳥嶋和彦)"に『ドラゴンボール』の孫悟空は、透明で何も染まってないのでウケる、と言われた。伊織もこの理論と一緒。特色ある色を持たないようにしようと思った。誰が見ても可愛いなぁ、を集中して描いた」
「伊織は計算されて、数学的にできている。とにかく誰もがいいと思うマドンナにしたかった。ただ案の定、そうなっちゃった。どんなキャラクターを持ってきても伊織に勝てない。本当に伊織は人気がありますね」
など連載当時の話を振り返りつつ、キャラクターデザインの秘密を語っている。
「40th Anniversary 桂正和〜キャラクターデザインの世界展〜」はファンだけでなく、桂先生を知らなかった人も大いに楽しめる内容となっているので、期間内にぜひ足を運んでもらいたい。また、桂先生の画業40周年突破記念のスペシャルサイトも公開されているので併せてチェックすることをオススメしたい。
取材・文・撮影/砂流恵介 ©桂正和/集英社
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