「日本で見られる映画の数は“大きな海原を小窓から覗いている”ようなものでして、莫大な作品のなかからセレクトされたものにすぎないんです」

そう語ってくれたのは、東京の新宿に店を構え、レア度の高い映画の輸入ソフトを専門に扱っているDVD&Blu-ray販売店「ビデオマーケット」の店主・涌井次郎さんだ。今回は思わず“ジャケ買いしたくなる日本未公開映画”を5作品リコメンドしてもらった。

【インパクトが凄すぎるジャケの映画】
『Fuck the Devil + Fuck the Devil 2』

まずは、タイトルからして破天荒な香りがプンプンとしている映画『Fuck the Devil + Fuck the Devil 2』(1990年公開)という作品から解説していただこう。

エロスホラーや謎解き、幻の怪獣映画まで! マニアックな海外輸入映画専門店が教える「ジャケ買いしたくなる」日本未公開映画ベスト5_1
血というよりも床にペンキをこぼしただけに見えるジャケット……
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「本作は、当時10代だったドイツの素人青年が撮った30分ほどの短編が2本セットになった作品です。ストーリーは呪いのビデオを見た殺人鬼が死霊に取り憑かれ、人々を惨殺していくというホラーお決まりのもの。続編のほうも前作で死んだはずの殺人鬼が蘇るという、これまたありきたりなストーリーになっています。

本作の見所はその圧倒的なチープさ。特に犠牲者の首を巨大なハサミで切断するシーンは必見。なにせアマチュア、リアルさを追求するほどの予算も技術もないので当然ダミーの首を切り落とすのですが、マネキンなので笑顔のまんま不気味に床へと落ちたりしています。こんなチープな映像が30年以上の時を経て市場に流通した事実に、ある種の感動を覚えました。

ジャケも強烈ですよね。これは劇中に登場する殺人鬼のもげ落ちてしまった生首を写したものです。それを床に置いて、さしたる工夫もなく撮っている乱暴さが、一周回って猟奇的な雰囲気を醸し出し、作為ではたどり着けない本作ならではの“安っぽい凄み”になっていますね」