5000人を超える移民労働者が死亡

カタールW杯会場建設での「出稼ぎ労働者死亡問題」を日本サッカー協会に聞いた_1
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日本代表は決勝トーナメントに勝ち上がることができるだろうか、欧州や南米の強豪国はいったいどんな試合を見せるのだろう、意外な強さを発揮して番狂わせのジャイアントキリングをやってのけるチームはあるだろうか……等々、熱心なサッカーファンに限らずとも、スポーツを愛する多くの人々が11月下旬から中東の地で繰り広げられる「勇気と感動のドラマ」を心待ちにしていることだろう。

このように祝祭感を盛り上げる事前情報やニュースが増えていく一方で、しかし、日本ではほとんど報道されない話題がある。競技場建設などの苛酷な労働で5000人を超えるとも言われる移民労働者たちが落命した事実とそれに対する補償の問題、また、主催国であるカタールの性的少数者に対する抑圧や刑罰など、前時代的な人権の取り扱いに警鐘を鳴らす報道だ。

日本語のスポーツニュースやサッカー関連情報を見る限り、これらの問題を真っ正面から取り上げて論じる番組や企画は、まず見かけない。せいぜい、新聞の国際欄などで欧州発の外電を手短な記事でごく散発的に紹介する程度だ。

これほど情報量が少ないと、日本のサッカーファンやスポーツファンのなかには、今回のW杯開催を巡ってこれらの問題が世界で長く議論の的になってきたことに気づかないままの人々もいるかもしれない。あるいは、なんとなく程度にうっすらと知ってはいても、しょせんは自分たちに関係のないこと、スポーツの盛り上がりに水を差す無粋なニュースとして聞き流し、記事をただ素通りしているのかもしれない。

これこそがまさに、スポーツウォッシングだ。

つまり、我々はいま、2022FIFAワールドカップを巡るこの問題について、大規模なスポーツウォッシングが日本で始まろうとする様子を目の当たりにしている、ということだ。