アメリカは景気を犠牲に

FRB(米連邦準備理事会)は7月27日、0.25%の利上げを決めた。政策金利は0.25%刻みで動くことが多いので、この利上げは通常の3倍になる。しかも、FRBは6月にもやはり0.75%の利上げをしている。これで今年3月からの利上げ幅は通算、2.25%となった。

アメリカの4~6月期GDPはマイナス0.9%(年率)で、1~3月期もマイナス成長だった。一般的に2四半期連続のマイナス成長は景気後退(リセッション)と見なされる。そのため議会ではアメリカ経済は景気後退局面に入ったのではないかと議論が起こり、マーケットも利上げの減速、早期打ち止めを織り込み始めている。

しかし、FRBはファイティング・ポーズを崩さない。「次回9月も0.5%利上げが妥当だ」というシカゴ連銀総裁の強気発言を口火に、金融政策担当者から大幅利上げ継続発言が相次いでいる。少なくとも現時点で、インフレとの戦いを緩めることはできないと判断しているのだ。

実際、アメリカ経済はインフレ材料に事欠かない。6月のアメリカ消費支出物価は6.8%上昇。これは40年ぶりの伸び率だ。7月の雇用統計も就業者が53万人近くも増えた一方で、失業率は3.5%と歴史的低水準にとどまったままだ。

人手不足で企業は賃上げを迫られている。購買力が上がり、インフレ予想が消費を刺激し、それがさらなるインフレ圧力となっている。エネルギー価格の高騰はいったん沈静化の様子を見せているものの、冬には再燃しかねない。またサプライチェーン分断による供給制もただちに収まる兆しはない。

二兎を追うことはできない。アメリカの金融政策は今、景気を犠牲にしてでもインフレを抑え込むという覚悟を示している。