娘は点描画家、親子仲は良好にみえたが…動機は金銭か?

一時は母親が経営するおでん店の2階部分で美香容疑者がバーを経営したり、アトリエのように使っていたこともあったとされ、母子関係に破綻の兆候は見出せない。

ただ、県警の捜査からは、金銭面でのトラブルの芽も見え隠れしているという。

「長濱さんは数千万円の資産を所有し、生前から娘夫婦に経済的な支援を度々していたようです。事件が起きてから約2カ月後には本島中部にある長濱さんの自宅マンションの所有権を美香容疑者が相続し、名義変更もされていたことがわかっています。美香容疑者は、遺産の一部の受け取り手続きも済ませていたとみられ、県警は、長濱さんの財産を狙って二人が犯行に及んだ可能性があるとみて、捜査を進めています」(前出メディア関係者)

地元メディアによると、容疑者の夫婦2人が、事件前にインターネットで「完全犯罪」などの情報を検索していた形跡もあったとされ、犯行が計画的なものであったこともうかがわせている。

〈沖縄・『おでん東大』事件〉母親殺人容疑で娘夫婦が逮捕! 有名ギャラリーイケメン店主がこだわった「売春街」と検索履歴に残っていた「完全犯罪」の文字_5
許田容疑者と美香容疑者(許田容疑者のフェイスブックより)

前出の住民は、娘の美香容疑者らしき女性が逮捕前に見せていた姿が脳裏に焼き付いているという。

「8月10日ですかね。沖縄の旧盆の初日でしたので、救急車やパトカーはこの辺りじゃ珍しくないんですけど、サイレンがやたら近いなって思ったら警察の方が訪ねてきたんです。長濱さんが亡くなったこともそこで知って、どうやら警察は自殺と他殺両方の線で捜査しているとかで。
その時『昨日何か不審な点や物音を聞いたりしませんでしたか』って聞かれたんですけど、特にお答えできるようなことはなかったんです。ただ3週間くらい前なんですけど、女性の方が東大さんの前で長い時間、呆然と座り込んでいたんですよ。思い詰めるように肩を落としていて、一瞬目が合ったらバツが悪そうにしてました。昨日の報道を見て、それが娘さんだったんだって気づきました。あの時はかなり暗い表情でしたが、何を思っていたんですかね…」

許田容疑者がこだわった旧売春街のギャラリーは2020年9月に不審火による火災で焼失し、クラウドファンディングを募って再建を目指していたという。
事件現場の「おでん東大」の周辺は、「栄町」とも呼ばれ、古くからの歓楽街としても知られるが、許田容疑者のこだわりに符号するような側面も持ち合わせる街でもあった。

「沖縄には『真栄原』以外にも、本島中部の沖縄市に『吉原』と呼ばれる売買春地帯がありますが、真栄原同様に行政や警察による浄化作戦でほぼ壊滅状態にあります。一方で、真栄原、吉原ほどの規模ではないですが、栄町にも売買春がひっそりと行われているエリアがあるのです。許田容疑者は、表だっては語られない沖縄の戦後史の一面を彩るような街の雰囲気に惹かれてギャラリーを運営していたのかもしれません。
ただ、沖縄の日本復帰前から店舗を構える『おでん東大』も、そうした街の歴史の一端を担う存在でした。許田容疑者らが犯行に手を染めていたとすれば、そんな希少な店の歩みに自ら終止符を打つ結果になったということで、なんとも皮肉な話です」(前出のメディア関係者)

〈沖縄・『おでん東大』事件〉母親殺人容疑で娘夫婦が逮捕! 有名ギャラリーイケメン店主がこだわった「売春街」と検索履歴に残っていた「完全犯罪」の文字_6
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凶行の背景にあったものは何か。事件の全容解明が待たれる。

取材・撮影・文/集英社オンライン編集部ニュース班