文化功労章を受章。県警は上級国民の指摘に…

波汐容疑者は事故現場から約1キロ圏内の一軒家で独り生活していた。いわき市出身の波汐容疑者だが、地元の親族は「ここ数年(親族とも)交流がなく一人で暮らしていた」と話す。

「数年前に奥様を亡くされて、お子様は東京住まい。近所の仲のいいかたはほとんどが亡くなっている。昔は頻繁に移動販売が来ていたけど、その業者も年配のかたで廃業してしまった。イオンによく通っていたのでしょう。波汐さんは車を毎日のように運転していたのですが(歳のせいか)あまり上手ではなく危なっかしかった。車庫入れのときは随分苦労していて何度も切り返し、たまにぶつけていました。3,4か月前に白い乗用車を軽自動車に買い替えたのですが、擦った後もあり、もっと周囲が運転を強く止めるべきでした」(近隣住民)

〈福島97歳暴走死傷事故〉「おかあさーん目を覚まして」周囲は救命措置。加害者は縁石に座り現場を見つめていた… 事故被害女性が惨状を告白_3
車庫には車を擦った跡が…

実は波汐容疑者は、地元紙で歌人として何度も報じられてきた地元の名士だった。
2007年に第34回日本歌人クラブ賞、2009年に県文化功労章を受章し、過去には福島県歌人会長を務めている。

「波汐容疑者はいわき市出身で、19歳の頃に短歌結社『潮音』に入社、以来人生を詩歌に注いでおり、周囲からは『先生』と慕われてきた。過去には東京電力でも仕事をしていたようで、東日本大震災以降は長期にわたり原発の危機をテーマにした詩歌をつくり、警鐘を鳴らしてきた」(地元紙記者)

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2017年詩歌文学館賞受賞した波汐容疑者(詩歌文学館ブログより)

2017年、詩歌文学館賞を受賞した福島原発事故をまとめた歌集「警鐘」には、皮肉にもこんな歌があった。

《ああ我ら 何にも悪きことせぬを 「原発石棺」終身刑とぞ》

過去の功績からか波汐容疑者は一部ネット上で上級国民と呼ばれているが、県警は記者の取材に「(例え上級国民でも)捜査に忖度はない」と語気を強めていた。

〈福島97歳暴走死傷事故〉「おかあさーん目を覚まして」周囲は救命措置。加害者は縁石に座り現場を見つめていた… 事故被害女性が惨状を告白_5
福島北警察署

波汐容疑者は21日午後、検察庁に送検された。
福島北署から移送の際、警察官数人に支えられながら車両に乗り込んだ波汐容疑者は上着を頭までかぶり、報道陣の前に顔を見せることはなかった。

前出の被害女性は「私にも離れた他県に高齢の親がいる。事故は他人事でない」と肩を落としていた。
警察庁によると、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は去年1年間に346件起き、前年より13件増加した。うち、90代を含む85歳以上のドライバーによる死亡事故は85件発生しているという。