ローカルならではの魅力がたっぷり
同様にシーズン2が期待されるのは、同じく回数限定で放送された福島中央テレビの『サクマ&ピース』だ。タイトルが示す通り、元テレビ東京のプロデューサー・佐久間宣行とアルコ&ピース・平子祐希の街ブラ番組だ。佐久間といえば『ゴッドタン』、『あちこちオードリー』、『ウレロ』シリーズ(いずれもテレビ東京)などを手掛けてきたスタープロデューサー。近年ではテレビ東京の社員でありながらニッポン放送の『オールナイトニッポン0』のパーソナリティも務めるなど、局や媒体の枠に囚われない活躍を見せていた。
昨年3月末をもってテレビ東京を退社し、フリーになった佐久間にオファーを送ったのがこの番組だったという。最初は「一緒に番組を作りましょう」という依頼だと思ったが、まさかの出演する側だったのだ。佐久間と平子の2人はともに福島県いわき市出身。だからこそ冗談のような座組が実現したローカル番組らしいローカル番組だ。
ロケは10時間で15軒を回る強行軍。これもローカルらしい。2人はそれに文句を言いつつ、地元ローカルトークや思い出話に花を咲かせたり、たまたま学生時代の友人に遭遇したりしながら、地元の魅力やローカル局のちょっとダメな部分を愛情たっぷりにイジっていく。一方で、佐久間が生まれて初めての食レポに四苦八苦する様子も楽しい。このときばかりは、いつもは佐久間に“演出される側”の平子が指導する立場に変わる。地方ならではのローカルな魅力と全国区バラエティ的な視点がバランス良く融合した番組だ。番組は終了したものの放送地域も徐々に拡大し、現在はアマゾン・プライムでも配信が開始されている。
地元に凱旋する全国区タレントたち
こうした全国区のタレントが出身地のローカル局で自分たちのやりたい番組を持つというのは、ローカル番組のひとつの醍醐味だ。
その筆頭といえるのが北海道放送でタカアンドトシがMCを務める『ジンギス談』だろう。ゲストを招いてのシンプルなトーク番組だが、そのシンプルさゆえ、タカトシの2人も力が抜けており、ゲストもその気兼ねない雰囲気に思わず本音を吐露することもしばしば。時間をかけてトークするため、普段のトークでは端折るようなエピソードも語られる。
同じく、じっくり芸人の話を聞くローカル番組といえば『やすとものいたって真剣です』(朝日放送テレビ)が白眉だ。「ポスト上沼恵美子」「ポスト・ハイヒール」などと言われるほどの貫禄で、関西では絶大な存在感を示す海原やすよ ともこがMCを務めるこの番組は、『あちこちオードリー』と並び、深い芸論が聞ける番組だ。
たとえば先日放送された狩野英孝の回などは、この番組の良さがよく出ていた。トーク番組などでは通常、言い間違えをツッコまれたりしてオチまで言わせてもらえない狩野のトークをじっくり聞き、彼の実家を紹介するVTRでも不必要なおふざけはなし。まっすぐでピュアな「愛される天才」狩野英孝に真正面から迫っていた。
福岡放送で不定期に放送されている『福岡人志、 松本×黒瀬アドリブドライブ』のように、大御所タレントが気ままに楽しんでいるように見える番組もローカル番組ならではだ。
中京テレビの『太田上田』もこの代表だろう。爆笑問題・太田とくりぃむしちゅー・上田がただただ喋りまくるだけの番組だ。だが、何しろ若手時代からの盟友である2人。どんな話になっても話題は尽きず、息のあったトークが展開されていく。
一方で、若手の挑戦枠としての側面もローカル番組にはある。いち早く霜降り明星を看板に据えた『霜降り明星のあてみなげ』を立ち上げたのは静岡朝日テレビだったし、蛙亭・中野の地元・岡山のRSK山陽放送では『蛙亭のかえる天国』が放送されている。テレビ神奈川の『かがやけ!ミラクルボーイズ 』は、若手コント師の雄・かが屋が架空の人気YouTuber「ミラクルボーイズ」に扮して神奈川の様々なスポットを巡る、コントと街ブラを融合させたような奇妙な番組。まさに挑戦枠に相応しい。