なぜ筋トレにAIが必要なのか?

また「1/workout」では、3つの目的を達成するためにAIを活用している。1つ目は『安全性の確保』だ。非常に重いバーベルを動かすため、マシンが意図せぬ動きをしないよう、特定の状況・動作を検知すべくジムにカメラを9カ所に置いている。たとえば「室内で人が倒れていないか」というように、カメラに映っている人を判定し、AIがそれを学習することでトレーナーがいなくても安全が確保できる空間を作っていく。

バーベルの重さ、上げる早さを最適化。 「無人個室AIジム」の驚くべき機能とは_4
AIカメラ(画像左)でユーザーを検知し、安全で科学的なトレーニングを提案

2つ目は、『VBT理論の実践』だ。VBT理論はVelocity-Based Trainingのことで、バーベルを上げる速さを最適化してトレーニングの効果を最大限に高める最先端のトレーニング理論だ。バーベルを全速力で上げて速さを計り、それに基づいてバーベルの重さや、上げる回数を決めてトレーニングを行う。日本ラグビーチームや、海外のプロスポーツチームにも普及しているトレーニング理論だ。

実は、バーベルを持ち上げられる重量の限界は、その日の体調によって変化する。体調が良ければ重くできるし、悪ければ軽くする。VBTでは常に全速力でバーベルを上げ続け、その速さに応じてバーベルの重さを調節。それでも一定の速度より遅くなったらトレーニング終了となる。こうすることで、その日の自分に合った負荷で、プロと同じ方法で身体を鍛えることができるという。

そして、3つ目は将来的な展望になるが、「AIによるフォーム指導」だ。フリーウェイトは、正しいフォームや力の入れ方でトレーニングできないと効果が薄い。当面の間はトレーナーがついて指導するが、最終的にはVBTに基づいた安全なトレーニングを1人ででき、初心者もトレーニングスキルが習得できるAIの開発を目標にしている。

ユーザーテストも好評、今後の予定は

筋トレ経験者を中心にVBT理論に基づいたトレーニングを体験してもらっているが、まるでプロのコーチに指導を受けているような質の高さが好評を得ているという。

「私も体感しましたが、最初は衝撃が走るんですよね。もうここでトレーニングを止めてしまうのか、と。ただ、それが正しいタイミング・重さだとわかるとトレーニングに対する考え方も変わりますよね。自分であともうちょっとかなと考えなくていいのは、トレーニングだけに集中できるので良いなと思います」(マーケティング担当者)

「追い込むことが絶対という、強いステレオタイプが筋トレにはあります。そこに対して『そんなことないですよ』というのがポイントなので、筋トレの経験が少ない方も抵抗なくやれると思います」(開発担当者)

バーベルの重さ、上げる早さを最適化。 「無人個室AIジム」の驚くべき機能とは_5
「1/workout」製品版のイメージ(画像提供:1/ONE)
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1/ONEでは、現在ソフトウェアのアップデートと最終製品に近い3号機の開発に着手しており、年内の完成を目指している。来年以降は順次3号機を展開予定で、ユーザートライアルを行った後に商用プロダクトとしてローンチ。将来的には、組み立て分解が可能で、どこにでも展開できるようなプロダクトを目指すという。また、すでに商業施設やホテルからも問い合わせを受けているとのことだ。

コンビニに行くように、至る所で筋トレができる。そんな未来が、やがて訪れるかもしれない。


文・撮影/若林健矢

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