「麻生、岸田、茂木」3派による三頭政治
いずれにしても安倍元首相に代わるだけの力量を持つ政治家が見当たらない以上、派閥としての安倍派の力は小さくなるはずだ。
そうなれば、岸田首相の政権運営にも少なからず変化が生じる。党内主流としてこれまで岸田政権を支えてきた麻生、岸田、茂木3派の三頭政治が強さを増せば、岸田カラーの政策を打てる環境が整う。
しかし、安倍派への同情から二階派、菅グループなどの非主流派が元首相の政治理念を安倍派とともに全面的に打ち出し、世論に訴えるような動きに出るようなことになれば、自民党内は麻生、岸田、茂木の主流3派と、安倍、二階、菅の非主流3派で分断が進む可能性も否定できない。
こうした分断状況を回避し、党内をまとめるうる人物として注目されるのが二階俊博前幹事長の存在だ。
安倍、菅政権時代に通算5年以上も幹事長を務めた二階氏は、田中角栄元首相の薫陶を受けた党人派で、派手なパフォーマンスよりも政治の裏舞台での駆け引きを好む老練な政治家として知られる。
安倍元首相狙撃事件によって自民党内でより複雑な派閥間抗争が想定される時には、自民党の内情に詳しく、政治の裏舞台でらつ腕をふるえる二階氏のような政治家がキーパーソンとして浮上してもおかしくない。
ともあれ銃社会とは無縁のはずの日本で、白昼に政治家をターゲットとして狙撃するような事件が起きるとだれが予想しただろうか? 暴力で言論の封殺を図ったという意味で、今回の事件は日本の民主主義がまだまだ未成熟であるということを示しているのかもしれない。
参院選投票日には有権者のみなさんにはぜひ、投票所に足を運んでほしい。その一票一票がテロに抗議し、民主主義を守ることにつながると信じている。
写真/AFLO