「正気に戻ること、それを大学には期待します」

今回の新学部設置を受け、同大が「産学連携の強化と学費値上げ」を推し進めていると担当者は指摘したうえで、今後さらに国立大学の企業化・私学化が進むのではないかとの懸念を示す。

「むろん、こうした動きの背景には、国立大学への運営費交付金が削減され、大学が自ら外部資金を獲得するよう求められてきた、国の大学政策があると考えています。

そういう大学の企業化のなかで、学生というのは、単に学費を納めるカスタマーとされ、構成員としての意見表明も十分に尊重されなくなってしまうのではないかと危惧しています」

東京大学(写真/PhotoAC)
東京大学(写真/PhotoAC)

続けて、同大が進もうとしている方向をこう批判する。

「営利企業ではなく、教育研究機関としての大学が稼ごうとするのはそもそも無理がある。莫大な授業料を課せば平等な学びの権利を侵害してしまうし、産学連携をむやみに進めれば汚職が発生する可能性がある。

東大が進んでいるのは、まさに破滅の道です。学問は稼ぐためのものではないし、大学教育は誰もが平等に受けられるべきものです。基本的原則に立ち返ってほしい。正気に戻ること、それを大学には期待します。新しい総長にも、とにかくそのことを期待したい」

東京大学(写真/PhotoAC)
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一方、東大では近年、医学系の教員による収賄事件が相次いでいる。2025年11月には医学部附属病院の准教授が、2026年1月には医学系研究科・医学部の教授が、それぞれ収賄容疑で逮捕され、その後起訴された。大学側は外部の専門家による検証委員会を設置するなど、再発防止に向けた対応を進めている。

なお、東京大学にも新学部について取材を申し込んだが、回答に代えて公式ウェブサイトのURLが送られてきた。

約70年ぶりの学部新設という大きな改革を進める一方、学費値上げや、不祥事への対応など、さまざまな課題を抱える東京大学。「世界の誰もが来たくなる大学」を掲げるなか、いかにして学生の学びの環境を守るのか。今後の大学運営が問われている。

また、今年9月の次期総長選考では、教職員による学内意向投票で最多得票だった候補ではなく、2位の藤垣裕子教授が選出され、選考過程の透明性や正当性をめぐって議論が起きている。

10月30日に東大は、選考会議の委員による投票では藤垣氏が最多の支持を得ていたことを説明した。しかし11月2日、関芳弘文科相は、学内意向投票と異なる選考を行った理由などについて、なお明確な説明がないと指摘している。

東京大学は、さまざまな課題を乗り越え、信頼を取り戻すことができるだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班