セカンドオピニオンで頸部の切除手術を回避
少年時代からスポーツ万能の人気者、高校ではサッカーの名門・市立船橋でキャプテンを務め、芸人としても体を張ったギャグで唯一無二の存在感を放つ。エネルギッシュなのはキャラだけでなくプライベートでも同様で、飲酒や喫煙の習慣もなく日常的に草サッカーに興じていた。
そんな健康体そのものだったワッキーさんの体を、病魔が襲ったのは47歳のことだった。
「ある日の仕事帰り、新幹線で品川駅に着いたときに伸びをしながら何気なく喉元を触ってみると、しこりのようなものができてたんです。1週間後にはそれが2つに増えていたのでさすがにおかしいと思い、近所の耳鼻咽喉科で紹介された大学病院へ行きました」
そこで診断された病名は、がん。しかも転移しているという。信じられない気持ちと同時に、ふつふつと湧いてくるのは感じたことのないような恐怖心だった。
「『がん』と『転移』、がんの知識なんて皆無だった僕にとって、この2つの言葉を突きつけられた時はめっちゃ怖かったです。
その後、PET検査(がんの原発部位や広がりを調べる画像検査)などをしても発生源がわからない、要するに支店があるのに本店がわからない“原発不明がん”だと診断されました」
その後、セカンドオピニオンを受けるためにがん専門の病院で改めて精密検査を行なったが、それでも原発巣はなかなか見つからない。
ワッキーさんによると、当時は原発巣が見つからないままであれば、首のリンパ節を切除する手術を行う方針だったという。この手術は傷跡が残るだけでなく、声帯や肩の挙上などに影響が出る可能性も指摘され、人前に出てしゃべる芸人という仕事を考えると、リスクが高かった。
しかし、命には代えられない。手術の日取りも決まって最後の診察を受けている時、事態は急変する。
担当医が「何かここが気になるんだよね。最後にもう1回いい?」と、喉奥の肉をメスで切り取って、その組織を病理検査に回すと“中咽頭がん”と判明したのだった。
「最新の医療検査でも見つからなかったものが最終的に先生の指先の感覚、長年の経験、勘、患者を思う愛みたいなもので見つけてくださった。すごい名医だなと思いましたね」
原発巣が見つかったことで切除手術以外にも治療の選択肢が増えた。それが放射線と抗がん剤の併用による化学放射線療法だ。ワッキーさんの中咽頭がんとこの治療法の愛称がよく、担当医によると「90%以上の確率で治る」とのことだった。早期発見ではなかったが、診断された病期はステージⅠ。
「“ステージⅠ”という響きにめちゃくちゃ安心しました」とワッキーさんは当時の心境をそう述懐する。













