お腹に穴をあけて胃に栄養剤を流し込む日々
そして、2ヶ月の入院生活を終える頃には放射線と抗がん剤により体はボロボロ。エネルギーに溢れていた“芸人・ワッキー”の姿は見る影もなくなっていた。
「骨折とか一般的な病気の場合、入院する時が一番しんどくて元気になったら退院するじゃないですか。でも僕の場合はその逆だったんですよ。入院する時はなんでもないのに、治療でどんどん弱っていって、これ以上放射線や抗がん剤で治療できないから退院しただけでしたから」
食への弊害も大きく、味覚がないどころか、口からの食事すらできなくなっていた。
「喉が焼けるように痛かったので、『胃ろう』(穴をあけた腹部から胃へと管を通し、直接栄養を補給する方法)で食事をしてました。
一家団欒で妻や子供たちが口からパクパクご飯を食べているなか、僕だけ穴のあいたお腹から直接栄養剤などを流し込んでる光景は、かなりシュールだったと思います(苦笑)」
退院後、1ヶ月をかけて口から食事を取れるまでに回復。しかし、味覚は依然戻らない。
「感覚的には治療前の2割くらいの味覚でした。2割から今後回復するのか、担当の先生に聞いてもわからない。この2割の状態から徐々に回復していくこともあれば、そのままずっと……というパターンもある。とにかく個人差があるんです。それが一番辛かった。
だって、マラソンだってゴールがあるから頑張れるじゃないですか。でもこの味覚障害はゴールがないかもしれない。『これが一生続くのか……』と考えることが本当にしんどかったです」
治療後の2年間はほとんど味を感じられない日々。そんな時期のワッキーさんを救ったのが品川区の大井町駅から徒歩1分の場所にある「越後つけ麺維新」大井町店の「辛とん」だった。
「再び味を感じるためにいろんなお店に行きました。味が濃くて、唾液が出ない僕でも食べやすい汁物料理を中心にね。その中でなぜかこのお店の辛とんだけがおいしいと思えたんです」













