がん治療で起こった味覚への異変
「あーうまっ! ほんとにね、僕はこのお店にめっちゃ助けられたんですよ」
うまい。一度は忘れたこの感覚を噛みしめるように、つけ麺をすするワッキーさん。
2020年4月、首にしこりを感じたため、病院へ行き詳しく調べてみると、がんを患っていることが発覚した。
「“そんなわけねーだろ”って思いましたよ。だって、どこも痛くないし、元気だし。人生で入院なんてしたこともなく、のどに前兆なんて微塵もなかったですからね」
調べていくうちに中咽頭がんであることが判明。宣告当初は死の恐怖にさらされるも、ワッキーさんのがんは「放射線治療との相性が良く、90%以上の確率で治すことができる」と聞いて、胸をなで下ろす。
腫瘍を切除する選択肢もあったが、医師によると20人中19人は放射線と抗がん剤を同時に行う「化学放射線療法」を選ぶとのことだった。化学放射線療法は副作用で味覚と唾液分泌に障害が起こる可能性を説明されたが……。
「あえて切除手術を選ぶ人は料理人とか、味覚が大事な仕事に就いている人。放射線治療のほうが治る確率が高く、副作用は、強く出る人とそうでない人がいると担当医からは説明を受けました。だから、自分は副作用があまり出ないほうであることに懸けて、その選択については迷うことはありませんでしたね」
しかし、ワッキーさんは副作用が強く出るタイプだった。
「入院して10日後くらいだったかな。放射線治療を受けながら1回目の抗がん剤を打った直後、急に味覚が変わったんです。
食事制限は特になかったんで、病院食の他に売店で買った大好きなカップラーメンのカレー味をよく食べてたんですが、その時はとにかくまずく感じました。カレー風味の何かまずい食べ物。そこから僕の味覚障害の人生が始まるんです」
おかゆやヨーグルトはただドロドロしたもので、おかずを食べても感じられるのは食感ばかり。食べることが大好きだったワッキーさんはこの頃を「食事のたびに絶望していた」と振り返る。













