「金属バット」と「筋トレ」の真相

写真イメージです
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まず言及したのは筋力トレーニングだった。

「バーベルとかダンベルを使って体を大きくしたというイメージが流布してますけど、あれ違います。そういう器具を部員が持ち上げているシーンがテレビで流れたせいかもしれないですけど、実際はほとんど使ってません。腕立て伏せとか腹筋とか、自重トレーニングが中心でした。下半身強化は山登りです。他の高校もやっていたような練習だと思います。前腕が大事、しなりが大事って、よう高橋(由彦)先生言うてて、従っていたらたしかに、体が大きくなりました。それに、筋トレが取り入れられるようになってから、食事も変わりました。朝食と夕食は、高校近くのレストランでとるようになった。あれも体づくりに影響したと思います」

金属バットについても訊いた。重く、甲高い音を発するゼットパワーの効果をどう感じていたのか。

「ゼットパワーは重かった。さすがに1キロは超えてなかったと思いますが、たしかに重かった。ただ、バットについても実際は違う部分がある。僕らがゼットパワーを真っ先に与えられたと言われてますけど、そんなことはない。持っている高校は他にもあった。だけど、重いから敬遠されていたんです。高橋先生のトレーニングが時期的に重なったから、僕らには使えたっていうだけなんです」

「高橋さんの筋トレがはじまった後に、岡山南高校との練習試合で蔦さんはゼットパワーを知ったそうで」とわたしが言うと、江上は思い出すように天井を見上げた。

「……あぁ、ありましたね。相手の打者にホームラン打たれたんですよ」

「その飛び方を蔦さんが気に入ったのですね」

すると、いや、と江上が否定した。

「ボールの飛び方っていうわけではないと思います。蔦さんが惹かれたのは、何よりも、音です。耳奥まで響く、あの甲高い音ですよ」

「となれば、筋トレと金属バットの組み合わせは、計算されたものではなく偶然だった」

わたしが言うと、江上はあっけなく答えた。

「うん、偶然かもしれないですね」

そして、江上はこうも続けた。

「高校野球をパワーの時代に変えたのは、僕は高橋さんだと思っているので」