「教育のプロではない」地域スポーツだからこそ必要な仕組み
井梅氏は、学校と地域スポーツの違いにも目を向ける。
「ジュニアスポーツのチームということを考えたとき、学校現場等、教育の専門性をもった大人ではないことが対応の難しさだったとも思います」
地域スポーツの指導者には、ボランティアで関わっている人も多い。
「私たちの書籍でも書いていますが、現在、日本の地域スポーツの指導者はボランティアであることも多く、教員のように教育のプロではありません。上述の対応については、文部科学省のガイドラインにあるいじめ対応ですが、ボランティアコーチの場合、そのような知識を得る機会があまりないことも実情かと思われます」
競技経験や指導への熱意があっても、子どもの心理やいじめ対応について専門的な知識を学ぶ機会が十分にあるとは限らない。だからこそ、個人の判断に任せず、組織として共通のルールを持つ必要がある。
「チーム内での情報共有を密に行うこと、子どもたちへの指導方針について、チームとして大事にしたいことをチーム内で共通認識として持っていること、といったことは重要になってくるかと思います。また、可能であれば保護者も加わって、チームの方針を決めていく、あるいは周知していくことが、子どもたちを守ることにつながると考えます」
こうした仕組みは、子どもだけでなく、指導者を守ることにもなるという。さらに井梅氏は、スポーツ特有のリスクとして、競技力の差が大人の判断に影響する可能性にも触れる。
「たとえば、加害児童が、チームにおいて中心的に活躍するメンバーだった場合、その子どもを試合等で外すと、チームとしても困るといった心理が働く可能性もあります。その場合、コーチがその児童に肩入れした形で聞き取りをしたり、指導をすることになり、公平性が失われます」
もちろん、今回の事例に当てはまると断定するものではない。
「普段、直接指導しているコーチとは違う人が聞き取りをするなど、チームとして複数の人間で対応することがやはり重要といえます」
勝利を目指すことと、子どもの安全を守ることは、本来対立するものではない。子どもが「嫌だった」「怖かった」と声を上げたとき、その訴えを誰か一人が抱え込まず、チーム全体で共有し、速やかに動く。
そして、その後も見守り続ける。
ジュニアスポーツで問われているのは、トラブルを完全になくせるかどうかではない。
何かが起きたときに、大人たちがどのような仕組みで子どもの声を受け止め、安全を守るのかということなのだ。
取材・文/集英社オンライン編集部













