CIA長官がロシア側に示した厳しい評価
現職のCIA長官がロシアを訪れたのは、ウクライナ侵攻を思いとどまるよう警告した2021年11月のウィリアム・バーンズ長官以来のことだ。異例の訪問で、いったい何が話し合われたのか。
「時間はロシアの味方ではない」
ラトクリフがロシア側に示したのは、ウクライナ戦争をめぐる厳しい評価だった。
ロシアの軍事力と経済は今後さらに悪化する。条件が不利になる前に、取引に応じるべきだ。ラトクリフがプーチンに直接伝えたかったのは、このメッセージだった。
プーチン政権はこれまで、長期戦になれば欧米の支援疲れが進み、ウクライナの人的・物的資源が先に尽きると見込んできた。選挙や世論に縛られる民主国家より、反対意見を抑え込めるロシアのほうが長く持ちこたえられる。
「時間はロシアの味方だ」。それが政権の前提だった。ラトクリフの評価は、その前提を正面から覆した。時間が経つほど苦しくなるのはウクライナではなくロシアだ。
いま交渉すれば大国の面目は保てるが、さらに弱まれば選べる条件そのものが消えてしまう。和平への呼びかけであると同時に、クレムリンの自信を揺さぶる心理戦でもあった。
プーチンの“ドタキャン”と公表されなかった「3つの大統領令」
プーチンは面会をドタキャンしたのか。
ロシア独立系メディアはクレムリンに近い情報源の話として、プーチン氏が当初ラトクリフ氏との面会を予定していたものの、ロシア情報機関との協議内容を知らされた後に取りやめたと報じている。
同筋はラトクリフの評価を「ゼレンスキーがすでにモスクワのポクロンナヤ丘に立ち、双眼鏡でクレムリンを眺めているかのようだ」と皮肉り、「ラトクリフは訪ねる住所を間違えた」と反発した。
もしこれが事実なら、ラトクリフのメッセージがプーチンを不快にさせ、直接会う価値はないと判断させた可能性がある。
大統領令605、606、607号もまた、関心を集める対象となった。ロシアの公開記録を確認すると、8月24日付の604号の次に載っているのは25日付の608、609、610号であり、その間の三つの番号は公の場に一切出ていない。
このことから、605〜607号は非公開か機密扱いの文書だとみなされている。公開された608号と609号は駐イラク大使の交代に関するもので、610号は退役軍人や障害者向け委員会の構成変更を扱っていた。













