「大河ドラマは全然観てない」それでも平賀源内を描く理由

これまであまりインタビューなどに登場してこなかった飯嶋氏だが、その姿勢の裏側にはもしや権力やマスコミに対する反骨精神が? あるいは素顔を明かさぬ美学、シャイな一面が…とも思いきや「いや、そんなことはないです。むしろ私が(メディアに)嫌われているんじゃない?」との茶目っ気も。

では、存分にお話を伺うべしと安堵し、まずはこの連載に至る経緯から。

これまで4、5年ごとの刊行で寡作とされていたのが、昨年の『南海王国記』から年頭の『虚空蔵の峯』と立て続けに新刊を発表。そして早、今回の新連載と驚くばかりのペースで意気軒昂な理由とは?

「いやいや、いつも大体こんなペースで書いてはいるんですけどね。ただ、『南海王国記』が随分止まったまま、7年も経って、こんな詰まった形になっちゃったわけです。作家になった当初も、自分が本当に書きいたいものを納得できる形で世に出すためには、仕事にしないほうがよいと考えてました。

予備校とか塾で教えながら、まずは生活があってなんとか食べられる状況というのもありましたし。だから、それまでは連載じゃなかったんです。それを54歳くらいでやめて、原稿料もらって書かせてもらうようになって、まだ20年くらいですか…」

飯嶋 和一 (いいじま・かずいち)
1952年山形県生まれ。83年、「プロミスト・ランド」で第40回小説現代新人賞、88年、『汝ふたたび故郷へ帰れず』で第25回文藝賞を受賞する。2000年、『始祖鳥記』で第6回中山義秀文学賞、08年、『出星前夜』で第35回大佛次郎賞、15年、『狗賓童子の島』で第19回司馬遼太郎賞、18年、『星夜航行』で第12回舟橋聖一文学賞を受賞。他の著書に、『神無き月十番目の夜』『黄金旅風』『南海王国記』など
飯嶋 和一 (いいじま・かずいち)
1952年山形県生まれ。83年、「プロミスト・ランド」で第40回小説現代新人賞、88年、『汝ふたたび故郷へ帰れず』で第25回文藝賞を受賞する。2000年、『始祖鳥記』で第6回中山義秀文学賞、08年、『出星前夜』で第35回大佛次郎賞、15年、『狗賓童子の島』で第19回司馬遼太郎賞、18年、『星夜航行』で第12回舟橋聖一文学賞を受賞。他の著書に、『神無き月十番目の夜』『黄金旅風』『南海王国記』など
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書き下ろし作家、という勝手な印象は大長編ゆえのスタイルではなく、現実的な理由からだったと。『狗賓童子の島』(2015年)からは連載も手掛け、ついに今作では文芸サイト内でのWEB連載もスタート。

「私自身、紙じゃなくてもいいんじゃないのかっていう。とにかく一定の収入をもらえて書かせてもらえるのが一番ですから(笑)。その時々の必要に応じて、適していればと」

ではそのタイミングも然り、今なぜ平賀源内という人物を題材に選んだのか。昨年の大河ドラマ『べらぼう』にも登場し、俄然再ブーム的な脚光を集めたキャラである。なにか触発されてか、偶々なのか…?

「いや、ドラマは全然観てないですから。意識は別にしてないですよ。ただ、偶然といえば、担当編集者に『あと2年経ったら、源内は生誕300年ですね』と言われて、そういえばそうだなと。3年くらい前ですか、ぶらっと入った古書店で、平賀源内全集を売ってまして、それが6000円とかでね。ゼロがひとつ少ないのかと恐る恐る持ってったら、本当にその額だった(笑)。

箱入りケースの底が抜けてボール紙で補修されていたり、本来は付録で付いていたらしい物産会(1762年夏)の広告チラシがなかったりしたせいでしょうが、私にしてみれば“内容を読めれば”それでよいので。

題材を決めてるとかじゃなく、漠然とですけど案外そういうことが立て続けに起きたりして、今回の本草学に関する部分でも貝原益軒の『大和本草』なんてのを普段行かない書店のショーウィンドウにぱっと見つけて、まぁどこか意識してるんでしょうね。これはやらないかんなと思ってたんです」