タワーマンションを買っていい人とは?

では、タワーマンションを買うべき人はいないのか。そう問われれば、私はこう答える。

「住みたい人は、買えばいい」。

私はかねてから、住宅とは嗜好品だと考えている。眺望のいい場所に住みたい、広いリビングで暮らしたい、古い町並みが好きだ─住む場所の選択は、突き詰めれば好みの問題だ。タワーマンションも例外ではない。あの高層階の眺望が好きで、そこに住むために頑張ってきたという人に対して、私は否定する立場にない。

ただ、条件が二つある。一つは、「投資にもなる」という目線を完全に捨てること。もう一つは、財務的な体力だ。ローンを目一杯組んでの購入と、余裕を持ったキャッシュ比率での購入では、リスクの質がまったく異なる。値下がりしても、金利が上がっても、生活が揺らがない範囲で買う。その二つを満たしたとき、初めて「住みたいから買う」という選択が本当の意味で成立する。

欲しいものを、欲しいから買う。そういったシンプルな理由で買う人間は、後悔することが少ない。問題は、そこに「儲かるかもしれない」「資産価値が上がるはずだ」といった雑念が混じるときだ。それが判断を歪める。

しかも、投資で失敗した人間は、自分の判断が正しかったことを証明したがる傾向がある。「いつか値上がりする」「金利はそのうち下がる」「外国人がいる限り需要は続く」─論理を歪めてでも、買った事実を肯定しようとする。その歪みに気づかないまま、塩漬けになった物件を抱え続ける。

今、タワーマンションの購入を検討している人に私は問いかけたい。「その物件が値上がりしなかったとしても、保有し続けますか」。迷わず「はい」と答えられる人だけが、タワーマンションを買っていい人だと私は思う。

タワーマンションは「都市生活の象徴」として語られることが多い。エントランスを抜ければコンシェルジュが出迎え、高層階のサロンからは都市の夜景が広がる。それは確かに魅力的な光景だ。

しかし私は不動産の現場にいる人間として、その光景の裏側を見てきた。美しい夜景を望むその足元が、危うい地盤に立っているものだということを理解してほしい。

東京・湾岸エリアのタワマン(写真/PhotoAC)
東京・湾岸エリアのタワマン(写真/PhotoAC)
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文/滝島一統

『その家、買ってはいけない 不動産屋が言わない、購入、投資、相続の真実』 (PHP研究所)
滝島一統
『その家、買ってはいけない 不動産屋が言わない、購入、投資、相続の真実』 (PHP研究所)
2026年6月17日
1210円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4569861319
老朽化が進む日本の住宅は、マンションであれ一戸建てであれ、「持っていれば資産になる」という常識が崩れ始めている。築古マンションでは、修繕積立金不足、住民間の合意形成の難航、管理組合の実態不明といった問題が深刻化し、表面的な価格や立地だけでは見えないリスクが潜んでいる。
中古マンションの契約書類を読んでも、壁の内側の劣化や配管の老朽化、将来の大規模修繕の現実までは把握できない。
一方、地方の一戸建ては、相続をきっかけに「売れない」「貸せない」「解体費だけかかる」負動産へ転落するケースが急増している。
さらに、老後資金対策として注目されるリバースモーゲージやリースバックにも落とし穴がある。契約者死亡時の一括返済や、住み続けられなくなるリスクは十分に知られていない。
ワンルームマンション投資もまた、「不労所得」という甘い宣伝とは裏腹に、空室率、修繕費、金利上昇を織り込めば、一定以上の利回りがなければ利益は出にくい。本書は、マンションと戸建て双方の危機を比較しながら、「住まいは本当に資産なのか」という根本問題を問い直す。買う前に何を確認すべきか、そして「持ち続けるべきか、手放すべきか」を冷徹に判断するための実践的な一冊である。

第1章   老朽化マンションの現実─修繕できない、管理できない、建て替えられない
第2章  〝負動産〟化する戸建て─相続・解体・思い出のはざまで
第3章  不動産投資のリアル─欲望の先に待ち受ける現実
第4章  タワーマンション─バブル崩壊前夜
第5章  賃貸か購入か─どこに住み、どう選ぶか
第6章  それでも家が欲しい人のために
第7章  知識があれば8割は防げる―不動産Gメンとは
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