「私が振りを渡したら、その子たちはその振り付けを一生やらなきゃいけない」

槙田が手掛ける振り付けは、歌詞に合わせた動きが特徴的といえる。振り付けの仕事について「楽曲に対しての最適解を出すこと」が、彼女の哲学だ。

「私は、その楽曲に対しての最適解を出すのが振り付けの仕事だと考えています。どんなに“SNSでバズる”と言われても、曲に合ってないと嫌なんです。そして、曲を魅力的に見せることが振り付けの役割。ダンスがついたことによって曲を好きになったという風になったらいいなと常に思っています」

バズった曲は2~3時間で振り付けが完成するとのことだが、決して勢いで作っているわけではない。槙田は、非常に大きな責任を感じながら振り付けをアイドルやアーティストに渡している。

「私が振りを渡したら、その子たちはその振り付けを一生やらなきゃいけないんですよ。例えば、歌番組など1曲だけを披露するような場だったら、おもいっきり踊って、息が上がるような振りでもいいと思います。

でも、アーティストにとって一番大事な場はライブ。私が振り付けした曲は、ライブのセットリストの中の1曲として入ります。ハードすぎる振り付けだと、多分(身体もパフォーマンスも)もたないと思うんです。

だから、ライブで負担になりすぎない振りを大事にしています。難しすぎたり激しすぎたりする振り付けを渡して、ライブでクオリティが下がるくらいだったら、最初からクオリティを担保できるレベルにした方がいいなって。

曲の最適解を出すこともそうですね。動きが理解できないと、理解できないままライブするしかなくなると思うんです。私にとっては振り付けした1曲でも彼ら・彼女らにとっては一生モノなので」

元アイドルという経歴を持つからこそ、槙田はアイドルたちの立場になって振り付けを考えていく。

そんな彼女は、FRUITS ZIPPER、CUTIE STREET、CANDY TUNEといったKAWAII LAB.所属のアイドルグループはもちろん、Juice=Juiceなどハロー!プロジェクト、そして中島健人の楽曲やYOASOBI「Watch me!」のダンスアニメーションパートなど、手掛けるアーティストの幅はどんどん広がっている。そんななかで、「新しいものを生み出さなければいけない」という焦りも明かした。

「焦りは常にあって…。限界突破していかないといけないんです。やっぱり“ワンパターンには絶対なりたくない”っていう気持ちがめっちゃ強いので、常に新しいものを、面白いもの、インパクトをっていうことをずっと考えています。

でも、私は、見たことのない動きは永遠に出てくるって信じているんです。手と足を使ってできる人間の動きは決まっています。だから、限界があるって言われたりするんですけど、私は限界はないはずって思っています」

バズる振付師・槙田紗子(撮影/山田智絵)
バズる振付師・槙田紗子(撮影/山田智絵)