国籍だけで線を引いても、本当の所有者は隠せる
それに比べ、日本側にはなお把握できていない部分が多い。外国人にも原則として所有権を広く認める一方で、不動産所有者の国籍を網羅的に把握する仕組みは長く整備されず、会社の後ろにいる実質的な支配者や、物件代金の資金源についても、不動産取得全体を横断的に把握する制度はない。
法務省、財務省、国交省、内閣府が、それぞれ別の制度を少しずつ見直している。情報も省庁ごとに分かれている。国籍だけを記録しても、日本法人を介した取得などでは、その物件を実際に支配する人物まで直ちに分かるとは限らない。
政府が今後検討すべき課題は多い。
不動産登記では国籍情報を適切に把握し、法人については実質的支配者をどこまで確認するのか。高額な現金取引では、リスクに応じて金をどう得て、どう円に替えたのかをどこまで確認するのか。
防衛施設の周辺では、取得後の利用状況だけでなく、どこまで事前に取得目的や資金提供者を把握すべきなのか。
違法民泊や賃貸借をめぐる法令違反、違法行為を伴う短期転売などは、国籍を問わず取り締まればよい。
政府は、外国人による取得が全体の何%かを示すだけで十分とはいえない。人数や割合だけを見ても、リスクの全体像はつかめないからだ。
名義の後ろにいる実質的な所有・支配者と、物件代金の出所。この2つをどこまで把握できる制度を作るのか。
日本では、その仕組みが十分に整備されてこなかった。今も残る制度の穴を、いつ、どの省庁が、どこまで塞ぐのか。政府には必要な数字を集め、国民に分かる形で説明する責任がある。
文/小倉健一 写真/shutterstock













