「一番大切なのは危ない場所には最初から行かないこと」

もちろん、水難事故への最善の対策は、そもそも事故に遭う可能性をできる限り下げることだ。海や川には、一見すると穏やかでも、岸からは分からない危険が潜んでいる。

海では離岸流のような強い流れが発生することがあり、川でも場所によって水深や流速が大きく異なる。晴れている場所でも、上流で雨が降れば水位が急激に上昇する場合がある。

水辺へ遊びに行くときほど「危険かどうかを自分の感覚だけで判断しないでほしい」と強調する。

「水難事故を防ぐうえで一番大切なのは、危ない場所には最初から行かないことです。立入禁止や遊泳禁止の表示がある場所には入らない。当然のことのようですが、『ちょっとだけなら』『ほかの人も入っているから』と考えてしまうことがある。

でも、看板や柵が設置されているのには理由があります。また、禁止表示がなくても、波が高い、流れが速い、増水しているなど、いつもと様子が違うと感じたら入らないことです。せっかく遊びに来たからと無理をする必要はありません。危ないと思ったら帰る。その判断が命を守ります。

特に海や川では、見た目だけで安全を判断するのは難しい。水面が静かに見えても、場所によって急に深くなっていたり、強い流れが発生していたりすることがあります。事前に天気や波、水位などを確認して、現地の注意表示にも必ず従ってください」(前同)

また、水辺では一人で行動しないことも重要だ。

「海や川では、複数人で来ていても、それぞれが勝手に動くのではなく、互いの位置を確認してください。少し離れただけと思っていても、流されれば短時間で距離が開くことがあります。

ライフジャケットを着用する、天候や波の情報を確認する、危険な場所には近づかない。こうした基本的なことを面倒だと思わないでほしいんです。水難事故では、危険な状況になってからできることには限界があります。だからこそ、その一歩手前で引き返すことが大切なんです」(前同)

「せっかく来たから」と海や川に入る必要はない。危険を感じたときに遊ぶことをやめられるか。その判断もまた、水難事故から命を守るための重要な技術なのである。

ブロックの隙間に転落したり、テトラポッドなどの消波ブロックも海辺で事故の多いスポット
ブロックの隙間に転落したり、テトラポッドなどの消波ブロックも海辺で事故の多いスポット
すべての画像を見る

取材・文/集英社オンライン編集部