「できないこと」を受け入れて「できること」を広げる

ダース お笑い芸人、ミュージシャンという不規則な仕事と、週3回の透析を両立させるのは大変だったと思います。

義太夫 正直に言えば、諦めた仕事もたくさんあります。透析は、月水金と日程が決まっていて、「2日以上は空けられない」という決まりがあるので、長期の地方巡業や泊まりの舞台ができなくなった。それは悔しかったですね。

ダース 仕事の予定の組み方も、大きく変わりますよね。

義太夫 以前、間違って透析後に仕事を入れてしまったことがあって…。ナレーションだったんですが、やってみたら笛みたいな声しか出ない。それで「何しに来たんだ」と叱られて、結局、別日に変更してもらったことがありました。

ダース そういった制限がある中で、どうやってモチベーションを保ってきたのでしょうか。

義太夫 今は「家でできる仕事」を増やしています。文章を書いたり、音楽を作ったり。リモートでできることが増えたのも助かっています。でも、お笑いのライブだけは、やっぱり現場に行かないと難しいですね(笑)。

ダース 透析を受けている間は、どう過ごしていますか。

義太夫 透析中はネタを考えたり、頭の中を整理する時間にしています。以前は、何か思いついてもメモする癖がなく、忘れてしまうことが多かったんです。でも今は、その場でスマホにメモするようになりました。

ダース 最後に、透析を長く続けてこられた一番の秘訣は何でしょう。

義太夫 やっぱり周りの支えですね。透析室のスタッフや、理解してくれる仕事仲間。一人では絶対に続けられなかったと思います。あとは、「体重はごまかせない」という潔さかな(笑)。透析のたびに体重を量るし、血液検査もする。不摂生をすれば結果に出る。それを受け入れて、また明日から調整する。その繰り返しですね。

文/ダースレイダー

『セルフ透析はじめました』(KADOKAWA)
ダースレイダー
『セルフ透析はじめました』(KADOKAWA)
2026年8月20日
2090円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4046080189
「受ける」治療から「自ら行う」治療へ。近年注目!セルフ透析のすべて

脳梗塞、糖尿病、腎不全、片目の失明etc.常に病と共に生きてきたラッパーが綴る。
近年話題、「セルフ透析」の記録をまとめたノンフィクション!

2025年9月、週3回・1回4時間の人工透析生活が始まったラッパー・ダースレイダー。
多くの人が「失われる時間」と捉える透析の4時間を、彼は「思考し、創造するためのスタジオ」へと変えていく。
その転機となったのが、自ら治療に主体的に関わる「セルフ透析」という選択だった。

本書は単なる闘病記ではない。
透析導入を先延ばしにしてきた葛藤、初めて「病人」になった実感、セルフ透析の習得に悪戦苦闘する日々、
出張透析でライブを続ける挑戦、そして家族との食卓や仕事との両立まで、リアルな日常を率直に綴るドキュメントである。
医師や看護師、長期透析患者らとの対話を通して、透析医療の現状や可能性も、ラッパーらしいカジュアルな筆致で伝える。

また、セルフ透析の第一人者・櫻堂 渉氏、田端透析クリニック院長・小杉氏、
ダース氏の先輩であり透析歴15年を超えるグレート義太夫氏など、有識者との対談も収録。

人生のモードを「アウトドア」から「インドア」へ。
制約を受け入れるのではなく、制約をハックして新しい自由をつくる―。
本書は、透析患者や家族だけでなく、病気や障害、仕事や介護など、
さまざまな「不自由」とともに生きるすべての人への、新しいライフスタイルを提唱する一冊である。
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