社会問題となったタワマン節税

明らかになっているのは、相続税から逃げるために、死ぬ間際に駆け込みで不動産を購入する富裕層の姿だ。

不動産を使った相続税対策が社会問題となったのはこれがはじめてではない。その代表例が、「タワマン節税」だ。

かつて、大規模なマンションは一戸あたりの土地の持ち分が狭くなるため、実際に取引される市場価格に比べて評価額が低くなりやすいという特徴があった。特にタワマンは高層階であれば高層階であるほど市場価格が高くなる傾向があるが、評価額との乖離は大きくなる。

この差をついて、タワマン高層階を購入し、それを相続させることで相続税の支払いを圧縮していたのだ。あまりにも露骨に行われたため、24年にマンションの相続税評価額の算出ルールが改定されたことで是正されたが、長年にわたり市場に大きな影響を与えた。

なりふり構わぬ節税策を正当化するため、「日本は先進国に比べて相続税が重すぎる」という議論が持ち出されることもある。一理あるが、欧米諸国に比べて著しく低い犯罪発生件数などの利点を享受している以上、富裕層にとって都合の良い部分だけを強調しているとのそしりは免れないだろう。

富裕層の露骨な“節税“に国税庁が怒り心頭! その額500億円規模…死ぬ間際の不動産購入ほか、新たな税逃れのトレンドに金融機関も手ぐすね_2

むしろ、富裕層の節税策は不動産市場に本来存在しなかったはずの資金流入を呼び起こし、不動産価格の上昇を招いた。

タワマン節税ではタワマン高層階の部屋に相続対策の需要が集中し、アッパーミドルの実需層が中層階や低層階に押し出されるようになったことでタワマン全体の相場を押し上げたとされる。

前述したような区分マンションへの投資でも、本来現金や株で相続されるべき資産が賃貸不動産のマーケットに流れ込むことで、賃貸マンション相場を下支えし、家賃高騰の一因となっている。

つまり、相続マネーが不動産市場を席巻することで被害を受けるのは不動産価格の高騰に伴い家賃負担が重くなる人々であり、これから不動産を購入しようとする若い世代であり、本来得られるはずの税収を得られなかった社会そのものであるとも言える。

もちろん、絵図を描いているのは富裕層本人ではない。

「相続を得意とする税理士や弁護士は多いし、相続税の圧縮に適した物件を得意とする不動産業者や資金を融資する金融機関がチームを組んで、一大産業を作り上げている」と語るのは、都内で税理士事務所を経営するB氏だ。