――これらは現状を改善するべきサインなのですね。

そうです。これらに加えて美容師は、ご自分でのチェックが難しい「頭皮の色」も観察します。

・「赤み」がある……皮脂や汗の過多、紫外線、シャンプー、パーマ、カラー剤などによる刺激で炎症を起こしている。

・「黄色」に近い……毛穴に皮脂や汚れがたまっている。べたつく、においがする。

・「白い」……頭皮が乾燥していて、角質がはがれてきている。フケやかゆみの原因となる。

・「青白い」……これが健康な頭皮。毛根が地肌に透けて見えている状態。

理想は青白い頭皮で、この色の場合は毛髪の状態もよいことがわかっています。信号と同じで、赤が止まれ、黄は注意、青は進め、とイメージしてください。美容院で確認してもらうとよいでしょう。

バサバサの毛は内部が空洞化している

――先ほどのチェック時に、「キューティクル」という言葉が出てきました。女性にはおなじみの毛髪の要素ですが、男性は意識しているのでしょうか。

言葉はご存じですが、説明をすると、よく、「へえ、考えたことがなかった」と言われます。キューティクルを整えることが、美しい毛髪を作るための基本ケアです。

キューティクルとは0.005ミリほどの薄さで、毛髪の表面をうろこ状に覆って内部を守っている膜です。毛髪の芯は「メデュラ」、中間物質は「コルテックス」といい、その大部分はタンパク質で、脂質やメラニン色素なども少し混在しています。

このキューティクルは大変薄いので、毛髪どうしの摩擦、紫外線、水に濡れる、乾燥、パーマ、ヘアカラー、シャンプーなどの刺激ですぐにはがれてしまいます。はがれると、内部の芯や中間物質から栄養成分が流出して「毛髪が空洞化」し、バサついた毛になってしまうのです。キューティクルをイメージして働きを知っておくと、セルフケアに大いに役に立つでしょう。

高まる男性の「美髪」意識…頭皮と髪の危険サインは?【美髪プロに聞く】_b

――毛髪には体を守る働きもあるそうですね。

ヒトの毛髪には、外部からの衝撃から頭皮や脳を守る役割があります。頭のケガ、傷、紫外線による害、直射日光による炎症などを緩和し、寒いときには保護をします。また、毛髪が抜けることによって、体内に蓄積された鉛や水銀などの有害な微量含有物をも排出しているといわれます。

――男性の美髪事情から、普段は意識をしない頭皮、毛穴、毛髪の奥の深い世界が見えてきました。まずは自分の頭皮の状態をチェックして、こうしたことを理解しておきたいものです。次回の後編では、今日からすぐにできるセルフケア法を具体的に紹介してもらいます。

構成・文 藤原 椋/ユンブル  取材協力・監修/三谷遥 写真/AC PIXTA