診察室の方から「誰か、誰か〜」という叫び声が聞こえたんです

午後2時15分ごろ、蕨郵便局から「拳銃を持った男が来ている」と110番通報があった。男は職員を人質に同郵便局に籠城。埼玉県警の要請を受けて警視庁捜査1課特殊班(SIT)が出動した。

同1時ごろにはJ R埼京線戸田駅近くの木造アパートから出火する火事があり、同市消防本部が約2時間後に消し止め、逃げ遅れやけが人はなかった。アパートは蕨郵便局に籠城している男の自宅とみられ、埼玉県警捜査1課は火災と発砲、立てこもりを一連の事件とみて捜査している。

蕨郵便局には20代と30代の女性職員2人が取り残されていたが、午後7時10分すぎにはこのうちの20代職員が歩いて外に出て警察に保護されている。男が説得に応じたもので、この職員にケガはなかった。

籠城男は高齢で黒い野球帽に黒色ジャージの上着、不織布マスクを装着し、弾倉式の自動拳銃らしきものに緑色の紐を通して首からぶら下げている。男はときおり郵便局の入り口付近をうろつきながら、周囲の警察官や報道陣を威嚇するように、拳銃の引き金に指をかけながら何かをつぶやいていた。

発砲事件があった病院(撮影/集英社オンライン)
発砲事件があった病院(撮影/集英社オンライン)
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医師と患者2人が撃たれてけがをした戸田中央総合病院の状況は、さながら地獄絵図のようだったという。通院に訪れていた60代の男性は、緊迫した状況を振り返った。

「午後1時すぎに院内の待合室で診察を待っていたんだけど、診察室の方向から『誰か、誰か〜!』という叫び声が聞こえたんです。私がいた1階診察室の待合室は入り組んだ場所にあるので、発砲音や窓ガラスが割れる音も聞こえなかった。

なので救急患者が出たのかなくらいにしか思ってなかったところ、すぐに『頭を下げて窓からすぐに離れてください!』という院内アナウンスが流れて、待合室には一気に緊迫感が漂いました。そこには50人近くの患者がいて『何が起きたんだ?』とみんなが騒然としていると、再び『事件が起きましたので、皆さん外に出ないようにしてください』とアナウンスが流れ、その数分後には私服と制服姿の警察官が十数人、なだれ込むように駆けつけて来ました」

蕨警察署(撮影/集英社オンライン)
蕨警察署(撮影/集英社オンライン)

そこから先は、ノンストップサスペンスのようだったと男性が続ける。

「廊下側の待合室のソファで聞き耳を立てていると、看護師さんの『発砲だって!』『2発!』『一人が貫通して、もう一人はコメカミをかすった』という上ずった声が聞こえてきました。診察室を覗いたら、診察台の下に50×30センチぐらいの血だまりがあり、ビックリしてさすがに診察台の上までは見ることができませんでした。

それからすぐに看護師さんの『ストレッチャー!』という叫び声に続いて診察室に撃たれた人が運び込まれました。もう一人の撃たれた男性は、お医者さんらしき人で、10分後くらいに額をガーゼで押さえて出てきましたね。自力で歩けるくらいだったので軽傷だったんだと思います」