「高校横綱」と「感謝状」2つのタイトルが証明した埼玉栄相撲部・名将の指導_1
写真/共同通信

寮での共同生活で学んだこと

全国から生徒たちが入寮する埼玉栄の相撲部では山田監督が夫妻で部員と同居し、日々の生活の世話をしている。現在、寮では同校の中学生から高校生まで27人が共同で生活し、掃除、洗濯など部員が家事を分担して暮らす。滋賀県近江八幡市から単身で上京し、高1から寮生活を始めた高山は、まず両親への「感謝」を学んだという。

「中学までは実家で洗濯とか皿洗いとかしたこともなかったです。高校へ入学してから寮でやるようになって、毎日、お母さんは大変なことをしてくれていたんだなとありがたみが分かりました。今は実家に帰った時はお母さんには休んでもらって、自分が皿洗いや洗濯をしています」

毎日の食事は、山田監督自らが作っている。1988年に同校の監督に就任して以来、学校で食べる昼の弁当も含めて3食欠かすことはない。

「毎日、毎日、先生が食事を作ってくださって、その姿を見ていると本当にありがたいことだなと思っています」

寮生活で両親や監督へ「感謝」を自然と育んできた高山だが、部活の練習はどんな日々だったのだろうか?

「選手の自主性を尊重してくれています。練習は嫌々やらされていたら強くなるものも強くならないと思います。なので、基本的には練習は自分で追い込む形です」

高山は、入学して間もなく山田監督から「鉄砲(相撲の伝統的な稽古方法の1つ)をやれば強くなるよ」とアドバイスされたという。ただ、その言葉を聞いても「本当かな?」と半信半疑だった。

「1年生の時は、先生に『強くなるよ』と言われても素直さがなくて『本当にこれで強くなるのかな?」って思っていました。それで鉄砲をあまりやらなかったんですけど、2年になって大会で負けて『なんで負けたんだろう?』と思うようになって。先生のアドバイスを素直に聞いてみようと考え直して鉄砲を真剣に打ち込みました。そうすると、どんどん力がついて目標だった高校横綱になることができました。自分でも『こんなに変わるんだ』ってびっくりしています」