「安心してください。“また”売れましたよ」
今回の一連の狂騒を受けて、とにかく明るい安村は苦労を強いた家族にそんな風に言ったかもしれない。
2015年、全裸に見えるポーズをとる“パンツ芸”で国内で大ブームを巻き起こした安村が、今度は世界の舞台でブレイクしている。
とにかく明るい安村の知られざるストイックさ。「自分の芸を磨くことに熱心」「海外進出は安村本人の希望」不遇のときを経て大復活できた理由
世界でブレイク中のとにかく明るい安村。一時は不遇の生活を送っていたが、どうやら偶然にチャンスが転がってきたわけではないらしい。芸人仲間や吉本興業関係者が、安村がいかに真剣に芸と向き合ってきたかを語る。
ブレイク後、不倫スキャンダルで風向きが変わり

2015年、「ユーキャン新語・流行語大賞」の表彰式に出席した安村
4月22日、YouTube登録者数1960万人のイギリスの超人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」の予選でサッカー選手やジェームズ・ボンドなど“現地ネタ”をもじった芸を披露すると会場は大ウケ。
審査員から「合格」の判定を受け、続く準決勝で一度は敗退するものの、ワイルドカード枠から敗者復活。6月5日に決勝の舞台を踏むと「スパイダーマン」や「スーパーマン」などのポーズでまたしても会場は熱狂。優勝とはならなかったが、観客の心をガッシリと掴んだ。
決勝でのパフォーマンス中のBGMにクイーンの名曲『Don’t Stop Me Now』を流していたため、クイーン公式ツイッターが「日本でもっとも愛される芸人のひとり、“tonikakuwearing”(安村)が『Don’t Stop Me Now』を使ってくれた」と大絶賛。このリアクションもあって、安村の世界的な知名度は目下グングンと上昇中だ。
世界のエンタメシーンでシンデレラボーイとなっている安村だが、日本でブレイク後の2016年、地元同級生との一夜の不倫スキャンダルを「週刊文春」にすっぱ抜かれた苦い経験を持つ。
この不祥事を機に世間のリアクションは手の平返し。ネット上では「体が汚い」「もう見たくない」といった意見が多く見られるようになり、テレビの露出も激減してしまった。
One of Japan's most beloved comedians @tonikakuwearing competed in the finals of @BGT yesterday and performed using Queen's "Don't Stop Me Now" https://t.co/tRCxIkwoPt
— Queen (@QueenWillRock) June 5, 2023
普通ならくさってもおかしくないような境遇だったが、安村は見事に“セカンドチャンス”をものにした。この復活の秘訣はどこにあったのか? 芸へのストイックさが成功の原因と語るのは、ある芸人仲間だ。
「ああ見えて安村は自分の芸を磨くことにとにかく熱心。それに番組に出演すれば、短い告知シーンでもボケを入れたり、最初から最後まで食らいついて芸を披露しようとする。今回のブレイクもそんな地道な努力が実を結んだんじゃないですか?」
オーディション番組出演も安村の希望
安村が所属する吉本興業の関係者もこう続ける。
「文春のスキャンダル記事で安村さんはCMが打ち切りとなったこともありました。でもあの人はくさらなかった。劇場のステージでコツコツと芸に磨きをかけ、復活のチャンスをうかがっていた。今回の海外挑戦も、コロナ禍が明けたタイミングを見計らい、自ら手を挙げたと聞いています」
また、その人間性を評価する声も。アームストロング(2014年まで組んでいたお笑いコンビ)時代から安村のことを知る先輩芸人が言う。
「下積み時代から性格がよくてつき合いのいいかわいい後輩でしたが、ブレイク後も周囲にちゃんと気を遣う。個室のある店じゃなきゃ嫌だとか、忙しいから先に帰るとか、エラぶるところは一切ありませんでした。とにかく天狗にならず、芸をコツコツと磨く。だから芸が伸びるし、周囲の人や関係者からも愛されるんでしょう」
テレビでの露出が激減していた安村だが、復活の兆候はあった。そのきっかけとなったのが、「有吉の壁」(日本テレビ系)だ。前出の先輩芸人が続ける。

書籍『安心してください、はいてますよ。』(竹書房)
「『有吉の壁』がまだ深夜放送だったころ、番組内で安村が頭髪を逆モヒカンに刈り上げる体を張ったボケで、有吉(弘行)さんから爆笑をとった。それがSNSで話題になって、仕事がまた増えだしたんです」
さて、今回の海外でのブレイクを受け、現在、安村のもとには営業のオファーが殺到しているという。
「ただ、安村さんはそうしたオファーにはさほど関心を示さず、テレビの仕事を重視するスケジュールを組んでいるようです。テレビ出演よりも営業のほうがずっとギャラが高いから会社的には営業の仕事も受けてほしいんですけどね(苦笑)。芸事にストイックな安村さんだけに、何か秘めている戦略があるのかもしれません」(前出・吉本関係者)
とにかく天狗にならずに、とにかく芸を磨く安村。テレビから一時的に消えても、くさらずとにかく明るかったからこそ、笑いの神が彼に2度目のチャンスを与えたのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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