ここ数年、年に1本のペースで出演作が日本公開されているコリン・ファレル。間近に迫ったSFヒューマンドラマ『アフター・ヤン』(10月21日公開)のほか、10月24日に開幕する第35回東京国際映画祭で上映される『イニシェリン島の精霊』(2023年1月27日公開)については、ヴェネチア国際映画祭で男優賞を受賞し、俳優として確かな地位を築いている。
そんな彼が2005年1月に初来日したのは、オリバー・ストーンが監督した歴史ドラマ『アレキサンダー』(2004)の主演俳優としてだった。アイルランド出身のコリンは、ハリウッドデビュー作の『タイガーランド』(2000)で注目され、トム・クルーズと共演した『マイノリティ・リポート』(2002)やベン・アフレック主演の『デアデビル』(2003)と次々と話題作に出演し、日本でも注目の若手俳優として取材陣が集まった。
当時のコリンは‟やんちゃな青年“というイメージが強かったが、取材では、ストーン監督と初めて会ったときに互いに泥酔するほどお酒を飲んで意気投合して出演を決めたことや、撮影中も共演者たちとバーでよく飲み、演技について語り合った話などを機嫌よく話していた。一方、2003年に誕生した息子ジェームズの存在によって自身が大きく変わったという。

『アフター・ヤン』主演のコリン・ファレル初来日の素顔。やんちゃな青年を成長させたふたりの息子の存在
『マイノリティ・リポート』でブレイクし、来春公開の『イニシェリン島の精霊』ではヴェネチア国際映画祭男優賞も受賞したコリン・ファレル。 トップ画像/当時28歳のコリン・ファレル。無精ひげのワイルドな雰囲気とは逆に、あどけない瞳が印象的。
スターのウワサ #1

2005年1月14日にパークハイアット東京にて行われた『アレキサンダー』の記者会見。
‟やんちゃ“なだけじゃなかったコリン・ファレル
「役作りのためにキャンプへ入って2週間目に息子のジミー(編注:ジェームズの愛称)が生まれたんだ。そのおかげで、かつてないほどの大きな脆さと、同時に、無償の永遠の愛を知った。そして、僕に息子がいるということで、無力感と強さと励ましと、誇りを感じてもいたんだ。これまで味わったことのない、両極端な感情を一時に味わったワケだけど、たぶん、この経験は僕自身を大きく変えただろうし、少しだけイイ人間に成長させてくれたと思うよ」
ロードショー2005年4月号『アレキサンダー』会見&インタビューより

パークハイアット東京で開催されたプレミア試写会では、スペシャルカクテルの“アンビシャス・アレキサンダー”(アレキサンダーの野望)を手にオリバー・ストーン監督と乾杯
結婚に囚われず、すべてを受け止め進み続ける
2001年にイギリス人の女優アメリア・ワーナーと結婚するも4か月後に離婚し、その後に交際した女性との間にジェームズが生まれるが、来日時にはすでに破局していて、愛しい息子になかなか会えないと吐露していた。
2009年にまた別の女性との間に男児ヘンリーが誕生し2児の父となるが、いま現在も2度目の結婚には至っていない。2019年の『ダンボ』の撮影時には、ジェームズとヘンリーを引き取って3人で暮らしていると米TVのトーク番組で語っている。
「アイルランドからハリウッドにやって来て、あれこれ書かれたし、素晴らしいこともたくさん経験している。世界中をまわって、いろんな人に会って、仕事もたくさんして、恋もして。結婚生活も4か月間だけど経験したし、いまは息子も生まれた。その良いことも悪いことも、すべて体験として受け止めてるんだ。その体験の積み重ねが、僕の人生だと思うから。いまだって、イイ人生だと思ってはいるけど、まだまだ満足しているワケじゃない。これからも、満身創痍になっても、進んでいくし、充実させたいと思ってるよ」
ロードショー2005年4月号『アレキサンダー』会見&インタビューより
お酒やタバコが好きで豪快なイメージが強いが、とても前向きで自分自身を俯瞰して見ることができる青年であった。現在46歳。20年以上ハリウッドの第一線で活躍し続けているということは、いまも変わらず進み続けているのだろうと思える。
文/石附信子 写真/亀井重郎
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