東京女子プロレスの中でも、日本のみならず海外でも人気なのが伊藤麻希。元々は九州を中心に活動しているアイドルグループLinQのメンバーだったが、プロレス映えする度胸とマイクパフォーマンスを武器に、団体の持つベルトを奪還する実力派レスラーに成長した。今回は、海外での反響や、話題となったマイクパフォーマンスの舞台裏を聞いた。

「プロレスを辞めたら死ぬ」 福岡の地下アイドルから、世界のリングへ。東京女子プロレス・伊藤麻希の野望_1
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――特徴的なリングコスチュームですが、どのようにデザインを決めているのですか?

コスチュームは上福ゆき(東京女子プロレス所属レスラー兼モデル)と一緒に考えています。彼女は私の特徴をよく理解しているから「こうしたらいいんじゃないの」っていうアイディアをよく話してくれるんです。メイクは、そんなにこだわりはないんですけど、流行りの抜け感メイクとか外国人風メイクとかはしないですね(笑)。

――でもヘアメイクも凄く雰囲気にあっていますよね。

アニメのキャラクターっぽく見せたいっていうことは、一番に意識していますね。最近、AEWという海外の団体にも参戦するようになってよりキャラ立ちは意識するようになりましたね。

――日本との違いはありますか?

やっぱり海外の女性レスラーたちは、みんな化粧が濃いんですよ! 私が隣りに立ったら、化粧してない人みたいになっちゃうんです。本当にアイシャドウとかも物凄く濃いピンクみたいなのを塗っているから、メイクでは太刀打ちできなくて(笑)。リング上のメイクは“もっと濃くてもいいかな”って思うようになりました。

――伊藤さんは、普段はどのようなメイク用品を使っているのですか?

今はネットのレビューとかで製品の良さもわかるじゃないですか。私はそういうのを参考にして買っています。ドラッグストアで買ったものばかり使っているけれど、全然こと足りるんですよ。(製品を手に取って)これは絶対落ちないです。眉毛を固める成分が入っているみたいで。

――自分よりも体格がいいレスラーと試合をするのは怖くないですか?

覚悟をしているから平気なんですよ。“痛いんだろうな……”って怯えながらリングに立って、張り手を食らうと「痛い! 」ってなるので。だからもう覚悟してリングには上がっています。

――今までで一番、痛かった打撃は?

里村選手(里村明衣子・レスラー兼センダイガールズプロレスリング株式会社代表取締役社長)のキックですね。あの人の蹴りは痛かったです。あと坂口選手(坂口征夫・DDTプロレスリング所属)の蹴りも痛かった! 人生で一番痛かったかもしれない……。

――リング上での過激なパフォーマンスが人気です。

リング上では相手にどう思われているのか、とかどうでもいいんです。対戦相手の人のファンからも「こいつ凄く嫌な奴」だと思われても、自分のファンが楽しければいいと思っています。

――名試合と言われている2018年1月4日後楽園ホール 『東京女子プロレス’18』で男色ディーノ選手(DDTプロレスリング所属)に、リップロック(キス)を決めた時のことを覚えていますか?

試合を観に来たみんなが笑ってくれたらいいかな、と思っていたからできた技ですよね。当時は、“キスは嫌だ”とか乙女な思考はしちゃ駄目だと思っていましたから。リング上では“女を捨てるのが当たり前”なので。

――アメリカで戦おうと思った経緯は?

2019年4月に初めてアメリカで試合をしたんです。その当時はまだ海外で試合ができることに対して、あまり興味はなかった。でも試合が決まった時に、めちゃくちゃファンの人が喜んでくれたんです。それから“世界でも通用するレスラーになりたいから頑張ろう”って思うようになったんですね。

――ファンの応援がモチベーションになったのですね。

実は、それまではプロレスの基礎の部分をなめていたんです。上手くできなくても、表現でどうにかなるだろうっていう甘い考えがあったんですよ……。でも本当に世界を目指そうってなると、テクニックが必要になる。基礎を磨くための努力は、本当にきつかったですね。でもそういう地道な努力があったからこそ、ようやくベルトを巻けるようになったりもしたんですけれど。