最優秀作品賞を受賞したのは3年連続女性監督作

2015年に国連総会で採択された、持続可能な開発のための、2030年までに達成すべき17の国際目標を掲げたSDGs(Sustainable Development Goals)。映画祭だって無縁じゃない。特に全世界的にパワハラ、セクハラ問題が深刻な映画界は”ジェンダー平等を実現しよう”が最優先事項で、影響力の大きい国際映画祭も動き始めている。

圧倒的男性社会の「映画界」を「映画祭」から改革。ジェンダーギャップに取り組むサンセバスチャン映画祭の本気度_1
ゴールデン・シェル賞を受賞したコロンビアのストリートキッズのロードムービー『The Kings of the Worl(英題)』
© CiudadLunar-LaSelvaCine
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9月に行われた第70回サンセバスチャン国際映画祭。映画祭のメーンであるオフィシャル・セレクション(コンペティション)で、本年度のゴールデン・シェル賞(最優秀作品賞)を受賞したのは、ラウラ・モア監督『The Kings of the World(英題)』(2022/コロンビア・ルクセンブルグ・フランス・メキシコ・ノルウェー)。1981年生まれ、コロンビア出身の女性監督の作品だ。

圧倒的男性社会の「映画界」を「映画祭」から改革。ジェンダーギャップに取り組むサンセバスチャン映画祭の本気度_2
『The Kings of the Worl(英題)』のラウラ・モア監督(写真中央)と出演者たち
©Alex Abril

ゴールデン・シェル賞を女性監督が受賞するのは、第68回のデア・クルムベガスビリ監督『Begining』(2020/ジョージア・フランス)、第69回のアリナ・グレゴレ監督『Blue Moon(英題)』(2021/ルーマニア)に続いて3年連続。

実は、今年の8月〜9月にかけてイタリアで開催された第79回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞(最優秀作品賞)に輝いたのも、女性監督のローラ・ポイトラス『All the Beauty and the Bloodshed (原題)』(2022/アメリカ)で、こちらも3年連続女性監督の受賞だった。

これは偶然ではないだろう。主要な国際映画祭はジェンダー平等を意識し、女性を審査委員長にすえ、審査員の男女の構成比も対等にするのが昨今の流れ。サンセバスチャンの今年の審査委員長も、当初はグレン・クローズだった(家族の非常事態で直前にキャンセルしたため、アルゼンチンのプロデューサー、マティアス・モステイリンが務めた)。一方のヴェネチアも、ジュリアン・ムーアが務めた。

さらに応募作から選出するセレクションメンバーの比率も、男女平等に配慮するようになった。もちろんいずれの監督もすでに国内外で高い評価を得ている実力者だが、選ぶ側に女性の視点が加わったことで、彼女たちの作品がより正しく理解されるようになったことは間違いない。ちなみに、第35回東京国際映画祭(10月24日〜11月2日)の審査委員長も、ミュージカル『ライオン・キング』の演出家としても知られる映画監督のジュリー・テイモアだ。