究極のアイドルグループをつくるというコンセプトのもと、2017年、秋元康氏プロデュースのオーディションバトル番組から誕生した「ラストアイドル」。
その活動の様子は番組『ラストアイドル』(テレビ朝日)で放映された。勝ち負けが明確についてしまうパフォーマンスバトル企画が繰り広げられ、アイドルの愛らしさとはかけ離れた過酷な挑戦も少なくなかった。チャレンジを続けるひたむきな姿が、筆者をはじめ多くのファンの心をつかみ、一方でメンバーは挑むことを通じて成長を遂げてきた。
5月末の活動終了を前に、集大成となるラストライブに向け、彼女たちは今なお、全力で走り続けている。阿部菜々実、間島和奏、橋本桃呼、篠原望の4人のメンバーがこれまでの活動を振り返り、最後の舞台への思いを語る。

ラストアイドルは「アオハルだった」ーー人気メンバー4人が語る挫折と成長、そして「喜びや感謝や怒り、悲しみを全てぶつける」フィナーレへ(後編)
テレビのオーディション番組から誕生した「ラストアイドル」が、5月末で活動を終える。約5年間にわたり、メンバーの入れ替えバトルをはじめ、アイドルらしからぬハードな企画に挑んできた彼女たちは、5月29日にラストライブを行う。グループのライブに足繁く通った“ラスアイヲタク”のライターが、人気メンバー4人にインタビュー。後編では、活動中の思い出や挫折経験、そして最後の舞台への意気込みを聞いた。
ラストアイドル インタビュー後編

阿部菜々実

間島和奏

橋本桃呼

篠原望
◆ ◆ ◆
アイドル人生が始まった日
――ラストアイドルとしての活動の中で、印象に残っていること、楽しかったことを教えていただけますか?
橋本桃呼(以下、橋本) 池袋サンシャインシティ、噴水広場での『愛しか武器がない』のリリースイベントがすごく記憶に残っています。デビューするアイドルたちがこの場所でイベントをしているのをずっと見ていたので、私もここに立てるんだ!ってうれしくて。四方八方から、ファンの人も通行人もみんなが私たちを見ていて、「アイドル人生」が本当に始まったんだなって思いました。
――2期生オーディションバトルで決まったメンバーのお披露目ですね。実は私も見に行っていました。イベントの最後、2期生と2期生アンダーのメンバー、合計30人との握手会もいい思い出です。
間島和奏(以下、間島) 握手会! 私、最初の頃はすごく苦手でした。憧れていたアイドルのように丁寧に対応しなきゃって考え過ぎていて。今は、親しい友達のような気持ちでファンの方々と接しています。バトルなどで辛い気持ちになっているときには、お話をすることで救われたというか、この人たちのために頑張れているって実感できる場所でした。
阿部菜々実(以下、阿部) ラストアイドルに入る前からアイドルとして活動していますが、私も握手会は苦手でした。ラストアイドルで周りの子たちの対応を見ているうちに、ラフでいいんだと気づいて。堅苦しくなくファンの方とお話しながら握手会を楽しめるようになったのは、自分としてはすごい成長だと思ってます。
篠原望(以下、篠原) 握手会とかトーク会って、ファンの人と直接話をできる貴重な場所ですよね。人と会わなくてもコミュニケーションが取れるSNSの時代に、わざわざ会いに来てくれることが嬉しいし、世の中にアイドルがたくさんいる中で、自分を選んでくれた人がいるのを実感できたのも嬉しかったです。

――「推し」(好きなメンバー)と話ができる握手会やトーク会、新曲リリース時のミニライブなど、メンバーとの距離の近さを感じることが多かったのも、ラストアイドルにハマった理由の一つでした。他にイベントや番組出演などの思い出ってありますか?
間島 歌番組の『うたコン』(NHK)に出演したのが思い出に残ってます。八代亜紀さんと共演させていただいたのですが、おじいちゃんが見ていて、すごく喜んでくれました。やっぱりNHKに出演すると違いましたね(笑)。
阿部 私はデビュー1年目のとき、「ビバラポップ」(音楽イベント)のサプライズで、大ファンだった鈴木愛理さんと共演できたのが嬉しかったです!
「本当にやめようと、卒業の文章まで考えていた」
――5年間の活動でさまざまな思い出がありますね。一方で、ラストアイドルといえばバトルや挑戦。本気で立ち向かったからこそ、決して楽しいことばかりではなかったと思います。
橋本 一番辛かったのは8thシングル『愛を知る』の選抜オーディションに落ちたときですね。本当にやめようと、卒業の文章まで考えていたくらいです。思いとどまったのはファンの方の存在。もう無理だなと思ったときに限って、メッセージを送ってくださるんですよ。「桃呼ちゃんのことが大好き!」って。
私を必要としてくれている人がいる限り続けよう、アイドルになりたくてやっとなれたんだからここで諦めるわけにはいかないぞって思い直しました。選抜メンバーを決める「ラスアイサバイブ」や、ファン投票でカップリング曲のメンバーを決める企画では、ファンの方の応援が力になりました。
篠原 私は『愛を知る』で選抜メンバーになれて、その他にもイベント出演権をかけた配信バトルで勝てたり、グラビアバトルのメンバーに選ばれたりしていました。自分としては毎回頑張っていたけれど、だんだん「なんでいつもこの子が入ってるの」みたいなネガティブな意見を見るようになって、表舞台に立つことが怖くなってしまったんです。
それでもファンの皆さんが「一緒に頑張ろうね」って温かい言葉をたくさんかけてくれて、頑張ってこられました。大切な友達も「誰にでもできる仕事じゃないし、まだちょっとでもやりたいと思うなら続けたほうがいいよ」って励ましてくれて、ありがたかったです。
間島 辛いなと思うことは日常的にありましたけど、やめよう、卒業しようと思ったことはなかったんですよね。最初のバトルで暫定メンバーから入れ替わったり、プロデューサーバトルで一勝もできなかったり。団体行動では指揮者に指名されてプレッシャーもすごかったし、いつもファンの方からいただく声に支えられました。
あと、私は秋元さん系のアイドルが大好きなので、自分が今、そのアイドルになれているという喜びで、今後、辛いことがあっても全然やれるなって思っていました。
阿部 2019年にリリースした『青春トレイン』の頃から、毎回の企画で落ち込んでいました。そんなとき、どんな自分も肯定して、好きでいてくれるファンの方々の存在は心強かったし、小さな頃からずっと応援し続けてくれる家族の思いにも応えたかったです。
私、諦めの悪さが本当にすごいんですよね。3歳からアイドルを続けてきて、アイドルとして売れたいって思い続けてきました。過去の自分を裏切れないし、ここで辞めたら絶対後悔するとも思っていて。自分から諦めず、最後まで続けたいって思っています。




全ての感情をぶつける最後のステージ
――活動を続けていた思いはそれぞれだけど、最後まで全力で走り続けてほしいです。活動の集大成が5月29日のラストライブ。意気込みを教えてください。
阿部 嬉しかったことも感謝も怒りや悲しみも、全てをこの数時間に込めて全部ぶつけたいです! ライブで全力を出し切って、自分がこれまでやってきたことが正解だったんだなって思えたら嬉しいし、会場にいる全員の心を動かせるような、貴重な時間にしたいです。
橋本 ラストアイドルってすごくライブに強いグループだと思っているので、いろんな企画をやってきた集大成をこのライブでぶつけます! 活動終了後にラストアイドルのことを思い出して、「すごく素敵な時間だったな、応援できてよかったな」って思ってもらえるようなラストライブにしたいです。
篠原 心に残るコンサートにしたいです。私自身はけっこう前から、ステージに立ったときに不安や怖さを持ってしまうことがあるんです。最後のステージはそういう感情を全部なくして、ファンの皆さんと一緒に、心から楽しかったな、よかったなと思えるステージにしたいです。
間島 アルバムのリード曲『僕たちは空を見る』は、このライブが初披露で最後になるんじゃないかと思います。すごくいい曲だし、絶対見てほしいです。ライブは2公演で全曲披露する予定なのですが、ラストアイドルの楽曲って全部で70数曲あるんです。純粋にコストパフォーマンスがいいです! お得です!

ラストアイドルは「青春」「人生」「挑戦」
――そこまで言われたらラストライブ、行くしかないですね。最後の質問です。皆さんにとって「ラストアイドル」とは?
橋本 「青春」です。中学3年生、15歳からやってきて、お仕事があるたびに地元の山口県から通っていました。普通の高校生のような文化祭や体育祭、卒業式みたいなものは体験できなかったけど、自分にとってはラストアイドルが「学校」のようなものでした。いろいろなことを学べたし、成長させてもらった、本当に「アオハル」でしたね。
篠原 「挑戦」。新しい自分を発見する場所でした。普通に大学を出て、芸能活動の経験を全くしたことがない状況からラストアイドルに入って、戸惑う場面もたくさんありました。入らなければできなかった経験がたくさんありますし、最後まで頑張ってきて今ここにいられることが嬉しい。挑戦した自分は間違っていなかったって思います。
間島 やっぱり「人生」だなってすごく思っています。アイドルって楽しい、キラキラなイメージだったけど、私たちはバトルや企画、過酷なこともたくさんやってきて、それをファンの皆さんの前でさらけだすことも多くて。でもだからこそ出会えた人がいた。人生の楽しいことも辛いこともどちらも共有できたアイドルだったのかなって思います。
阿部 私も「青春」だったと思います。たくさん夢をかなえてもらったし、ラストアイドルだからこそ見られた夢もあった。以前はSNSでエゴサーチしてもほとんど名前がなかったのが、注目されるようになってテレビの影響力はすごいと思ったし、たくさんの人が関わっている大変さも感じました。とんでもないグループに入ってしまったなとも思ったけど、人一倍いろいろな経験をさせてもらいました。それはきっとこれからの人生に活きると思うし、自分の大切な時間をラストアイドルに捧げることができて、自分的には正解だったと思っています。
◆ ◆ ◆
「ラストアイドル」とは何だったのだろう――。
常に何かに挑み続ける、究極のアイドルグループ。喜びも苦しみ悲しみも全てをさらけ出し、ファンとともに全力で走り続けた、唯一無二のグループ。
ファンとして、ともに走ることができたのは、自分の人生の中で得難い体験だった。全力で走り続ける31人のメンバーを最後まで見届けたいと思うし、活動が終了した後も、彼女たちの幸せをずっと願い、応援し続けたいと思っている。
(終わり) インタビュー前編から読む>>
阿部菜々実 あべ ななみ
2002年、山形県生まれ。ラストアイドル1期生。ニックネームは「ななみん」。ラストアイドルの大半の表題曲でセンターを務める、絶対的エース。
間島和奏 まじま わかな
2000年、北海道生まれ。1期生。「わかなちゃん」「まじまじ」の愛称で親しまれ、表現力豊かなパフォーマンスに定評がある。グループの精神的支柱。
橋本桃呼 はしもと ももこ
2003年、山口県生まれ。2期生。「ももこ」「ももちゃん」とのニックネームで、明るく元気なパフォーマンスでチームを牽引する、2期生のセンター。
篠原望 しのはら のぞみ
1996年、千葉県生まれ。2期生アンダー。愛称は「のんちゃん」。柔らかな笑顔と優しい声に誰もが癒される、グループのお姉さん的存在。
取材・文/西野淑子
撮影/田中 亘
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