――昨年12月のM-1が終わって約5ヶ月。単独ライブのチケット発売時に販売サイトがサーバーダウンしたり、朝の番組出演が少々炎上気味になったりとトピックに事欠きません。今の状況をどう受け止めていますか?
川北 ファイナリストと呼んでもらえる期間が一旦終わって、すごく暇な状態ですね。
ガク 今は収録したものが放映されてはいるんですが、“貯金”がなくなっていくので。
川北 多いときはすごい行ってたもんな、収録とか。
ガク ちょっと今落ち着いてしまって、“おかわり”待ちですね。それがなかなか来ないなという……(笑)。
――いわゆる“一周”はして、再度のオファー待ち。
川北 そもそも僕ら的には、「おかわりってあるんだ」という発見を最近したんですよ。
ガク 他の人には来てるんだよって、後から聞いて知ったんです。
川北 みんな順番に一周して終わっていくのかと思ってたんで。
ガク 聞かないほうが幸せでしたね……。

トガったまま突っ走る真空ジェシカ。ラジオは「全部楽しいっすね」、テレビは……「ちゃんと話せばわかってもらえるはず」(前編)
M-1グランプリ2021で決勝に進出し、一気に地上波の舞台に駆け上がったお笑いコンビの真空ジェシカ。朝のテレビ番組でボケ倒すストロングスタイルも話題になったが、ライブシーンではそのトガりとセンスが以前から注目されていた旬なコンビだ。ところ変わってもスタイルを貫く川北茂澄とガクのふたりが今、考えることは――。インタビュー前編では、M-1後の変化や近況を掘り下げていく。
真空ジェシカ インタビュー【前編】

真空ジェシカのガク(左)と川北茂澄
ちゃんと話せばわかってもらえるはず


――おかわりが来てほしいと思った仕事はありますか?
川北 ラジオですね! ラジオは基本的に全部楽しいっすね。『爆笑問題の日曜サンデー』(TBSラジオ)も楽しかったし、ナイツさんの『ザ・ラジオショー』(ニッポン放送)も楽しかった。塙さんは、自分たちの芸風をよくわかって話してくれて。
ガク ラジオで話した方々はそういう、わかってくれる人が多かった。
川北 本当は、(ラジオパーソナリティだけでなく)みんなそうなんだと思いたいんですけどね。
ガク ちゃんと話せばわかってくれるはず。
川北 テレビだと段取りがしっかりしてるから、付き合ってもらえないんだと思います。
ガク ラジオは「フリートークが何分間」くらいの段取りで、その場でつくっていくことが多いもんね。


オズワルドのラジオは「実りがないので聞いてない(笑)」
――ラジオと言えば、TBSラジオPodcastの冠番組『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』では、ほとんどラジオを聞いてこなかった二人が、息子のようにラジオに可愛がられて育てられたいというのが番組名の由来です。最近はラジオを聞いていますか?
川北 やっぱり自分らの周りの人の番組しか聞かないですね。『ママタルトのラジオ母ちゃん』(GERA放送局)とか『令和ロマンのご様子』(stand.fm)、『ストレッチーズのプリ右でごめん』(GERA放送局)、『ひつじねいりの荒走り教習所』(オーディオブック)とかそのへんです。
――『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』の地上波放送枠を明け渡す形で、M-1決勝で一緒だったオズワルドのラジオ番組が始まりましたが。
川北 オズワルドの番組は聞いていないです。実りがないので。
ガク 僕もあまり聞いてないです(笑)。
――「自分らの周りの人」というところで、今注目の芸人は?
川北 先輩か後輩かあんまわかんないんですけど、ご存知ですかね? カナメストーンっていうやつらがいて。そいつらが最近面白くなってきている。
ガク 先輩なんだよ! ライブ呼んでもらったりしてる先輩だろ。
川北 結構面白いです、まだネタは粗いんですけど、今後が楽しみですね。
ガク 可愛がってもらってる立場だろ。お前、決勝行って変わったな。
――やはりM-1決勝以降で変化がありますか?
ガク ライブに出る頻度が減ったので、下の芸人は見れていないですね。
川北 僕はあんまり芸人に上とか下とかないと思うんですけどね。
ガク 芸歴が、だよ。絡みが少ない後輩はチェックできてないですね。

多様化する大喜利の世界
――そんな中でも『大喜る人たち』などのアマチュアも交えた大喜利ライブには出演なさっていますね。
川北 『大喜る人たち』では冬の鬼さんとか俺スナさんとか、そういう(アマチュアの)人たちの華のなさがすごい。
ガク 芸人じゃないし華を出す必要がないからね。
川北 回答の良さだけで戦っている。でも、俺は人の回答に乗っかってるだけなんで、自分がした回答とか何も頭に残ってないんですよ。
ガク 僕も全然覚えてないですね、自分の答えも他の出演者の答えも。でも、「大喜利で好きだった回答は?」みたいな質問って、たびたびもらうんです。メモぐせをつけたほうがいいですね……。
川北 『大喜る人たち』で、(お笑いトリオの)ハチカイの警備員という芸人が「ちびまる子ちゃんの世界で起こったバトルロワイヤル」ってお題にした絵回答が一番面白かったな。
【大喜利】ちびまる子ちゃんの教室で始まったバトル・ロワイアルで起こりそうなこと 【大喜る人たち262問目】3:28〜
ガク あれは面白かったね。
川北 大喜利やる人って、気に入っている回答とかがあるらしいんですよ。自分たちも大喜利は好きだと思ってやってるけど、そういう人たちと比べたらそんなに好きじゃないのかなって思います。
ガク 大喜利ライブの楽屋とかで、「良かった回答は?」みたいな話になるよね。
川北 そうそう。みんな他の出演者の回答とかよく覚えてるし、「順位お題は良くない」みたいな議論を楽屋でしていたりして。
ガク 「デート中やってはいけない〇〇。第1位は何とか、第108位は?」みたいなやつね。
川北 「アホアホ高校」みたいなお題も彼らに言わせると良くないらしいんですけど、わからないんですよ。自分は答えやすいって思っちゃいますが。
ガク 「アホアホ高校の校則とは?」とかね。そんなに掘り下げて考えてない。大喜利は趣味とか言えるほど好きではないかもね。
――二人の本ネタについても比較的大喜利っぽい構成にも思えるのですが。
川北 それとこれとは違うような気はしますね。ネタと大喜利が違うというか、俺らがやってる大喜利が違うのかな。普通の大喜利じゃなくなってきている感じがして。バッファロー吾郎さんが主催していた『ダイナマイト関西』や『IPPONグランプリ』のような、フリップに書く内容がそのまま回答になってる大喜利だったらネタに近いのかも、と思います。俺らがやってる大喜利って、めちゃくちゃしゃべってるのにフリップに回答として書いてあるのは最後のオチだけだったり、どこまで遠くに飛ばせるかを競っている感じで。
ガク ホームランコンテスト状態?
川北 そう。それでいて俺は人の回答に乗っかるだけだし(笑)。大喜利とネタは近いのかもしれないけど、俺らがやってる大喜利はネタとは全然関係ないです。
ガク 大喜利も多様化してきていて、それぞれ違う競技かもしれない。

ぷよぷよでわかる「マヂカルラブリーは漫才」
――川北さんは、ゲームの「ぷよぷよ」は漫才だとよくおっしゃってますね。
川北 ぷよぷよでは、(技である)「連鎖」させるための土台になる「ぷよ」の組み方ってある程度決まってるんですよ。土台がしっかりしていればその上は何をしてもいい。この土台って漫才でいうと設定の部分。ネタの導入で設定をちゃんと理解させられていれば、その上で何をしても伝わる。土台をおろそかにすると漫才じゃなくなるんですね。例えば、マヂラブさんも土台はちゃんと組んだ上で、「ぷよ」をぐるぐる回転させている状態だからやっぱり漫才なんですよ。
ガク 長いな。
川北 ぷよぷよは連鎖を使った戦い方が人によって違います。何回も連鎖させると強い攻撃にはなるけど、長い連鎖を打てばいいってもんでもないんです。長い連鎖は強いけど、2連鎖ダブルとかの短くて効率のいいぷよの消し方に邪魔されるリスクがあって、そういうふうに弱い攻撃を素早く繰り返す戦い方もある。ぷよぷよをやってると、どの戦い方が得意なのかわかってくるんですよ。
ガク 楽しくないな、なんか。
川北 僕は長い連鎖を組んで消すタイプじゃなくて、途中で2連鎖ダブルとかで邪魔する戦い方。だから僕らの漫才もでっかい筋があるんじゃなくて、中ボケをいっぱい繰り返していくタイプ。
ガク 理論がしっかりしてる分、聞いてて全然楽しくない。
川北 ぷよぷよの配信を一緒にやってる(コンビ芸人の)ストレッチーズとかは、漫才の1本の構成がしっかりしてる。実際、そういうぷよぷよをやるんですよ。霜降り明星の粗品さんとかも、ぷよぷよをやったら2連鎖ダブルとかをちょいちょいやってくる感じだと思う。ぷよぷよをやることで自分はこういう漫才をやったらいいんだっていうのがわかるんです。
――ぷよぷよでの攻撃スタイルが、自分に向いている漫才のスタイルだと。ご説明いただいたようにボケのスタイルは分かれますが、導入となる土台の作り方は共通なんですか?
ガク いいお客さんだな、おい。
川北 そこもいろいろあるんですが、一番多いのがGTRっていうぷよの置き方で、まあ一種の定石ですね。初心者もGTRから覚えるけど第一線のプレイヤーも基本はGTRの形を組むというメジャースタイルです。これは漫才でいうところのコントイン。「俺は〇〇やるからお前は〇〇やって」という土台ですね。
ガク しっくりくるようでよくわかんないよ。
川北 やってみてもらったらわかりますよ。逆もまたしかりなので。
――ぷよぷよのプレイヤーからも漫才のスタイルがわかる?
川北 そうですね、(プロゲーマーの)Tomさんとか実況も熱が入ってて面白いんですが、割と不定型の連鎖の組み方をされる方なので漫才でいうとおそらくしゃべくりですね。
ガク 囲碁将棋さんみたいな?
川北 確かに。囲碁将棋さんって普段の話し方とネタ中があんまり変わらないから近いかもしれない。
ガク ぷよぷよと漫才どっちも詳しくないと何もわからない話だな。
川北 あとプレーヤーのliveさん。結構難しい連鎖尾を組んだり、メインの連鎖を消してステージがまっさらになったあとにまた連鎖を組む「セカンド」の効率がすごかったりするんです。
ガク クライマックスに盛り上げる感じ?
川北 いいときのオズワルドですね。結構難しいことをやって盛り上げてる。M-1のオズワルドの2本目がうまく行ってればliveさんになれたはず。
ガク オズワルドはliveさんを目指さなきゃいけないのか。
川北 たぶんオズワルドにぷよぷよをやらせたらliveさんみたいなスタイルだと思います。
――やってみてほしいですね!
川北 頭硬いんでやってくれるかどうか……畠中はやってくれそう。
取材・文/宿無の翁
撮影/柳岡創平










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