「日本の原発の耐震性は極めて低い」

政府は8月24日、電力の需給ひっ迫などに対応するために、すでに再稼働した原発10基とは別に7基の再稼働を目指す方針を示した。ほかにも、原発の運転期間の延長や、安全性が高いとされる次世代原発の建設を検討することも明らかにしている。

だが、それに真っ向から異を唱え、「原発は絶対に動かしてはならない」と全国各地で講演を続けている元裁判官がいる。

“原発を止めた”裁判官が、退官後も原発の危険性を訴え続けるわけ_1
樋口英明(ひぐち・ひであき)
福井地裁元裁判長。1952年生まれ、三重県出身。福岡・静岡・名古屋等の地裁・家裁等の判事補・判事を経て2006年4月より大阪高裁判事。14年5月21日、関西電力大飯原発3・4号機の運転差止を命じる判決を下した。さらに15年4月14日、原発周辺地域の住民ら9人の申立てを認め、関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差止の仮処分決定を出した(撮影/樫田秀樹)
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その人、樋口英明氏が注目されたのは、2014年5月に自身が福井地裁の裁判長として判決を出した関西電力大飯原発3・4号機(福井県おおい町)の運転差し止め命令だ。これは2011年3月の福島第一原子力発電所の事故後に出された、初めての原発運転差し止め判決だった(この判決は18年に名古屋高裁金沢支部によって取り消された)。

樋口氏が、運転差し止めの判決に至った理由は「日本の原発の耐震性は極めて低い。よって、原発の運転は許されない」という、極めて単純明快なものだった。

裁判官は自分が関わった事案について退官後も論評しないといわれるが、樋口氏は「原発の危険性はあまりにも明らか」という理由から、定年退官後も脱原発の訴えを続けている。

9月10日には、樋口氏の一連の活動を映像に収めたドキュメンタリー映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』が公開された(ポレポレ東中野より全国順次公開)。

原発推進の動きが加速し、国民の間にも「原発再稼働やむなし」といった空気が流れるなか、それでも樋口氏が原発の危険性を訴える理由を聞いた。