「あえて飲まない」ソーバーキュリアス

「アメリカやヨーロッパでは、ソーバーキュリアスは『クールなもの』として受け入れられている節があります」

そう話す桜井鈴茂さんは、ソーバーキュリアスを実践し「あえて飲まない生活」を楽しむようになって約2年半。小説家として活動しながら、2020年にノンアルコール飲料専門のECサイト「MARUKU」を、2021年には直営のカフェ「Low Alcoholic Cafe MARUKU」を立ち上げた。

20代からお酒を飲むようになり、約30年の間、途中からは休肝日もなかったほど飲酒が当たり前になっていた桜井さん。在宅時なら1日缶ビール3〜4本。週に3度くらいは外に飲みに行き、その量のビールに加えてワインを一本ほど嗜むのが日常だったという。

「飲酒していた最後の方はもはや『飲みたい』というより『飲まないと気が済まない』という状態になっていたかも。酔って寝落ちはするけれど、眠り自体は浅くて明け方に目覚めたり、酔った勢いでやらかした言動を翌日になって悔やむこともありました」

「飲まないデメリット」はほぼない

そんな日々に嫌気がさしていた桜井さんは2020年1月、「一時的にお酒をやめてみよう」と決意。国内の大手メーカーがつくるノンアルコール飲料(以下、ノンアル)を試してみたが、物足りなさを感じたという。

試しに海外のノンアルコールビールを取り寄せて飲んでみたところ、本格派な風味や雑味のなさに驚き、一気にそのおいしさの虜に。それから数カ月後には、ノンアルを専門に扱うECサイトを開始した。

「僕がソーバーキュリアスを難なく続けていられるのは、じつは単純な話で、ようするにおいしいノンアルを飲んでいるからだと思います。いくら日々の充実のためとはいえ、口に合わないものを毎日飲むのは辛い(笑)。おいしいノンアルから満足感を得られているので、『断酒している』という意識はあまりないですね。

ソーバーキュリアスを実践してから『一日ってこんなに長かったんだ』と感じるようになりました。まず、夜の時間を有効に使えるようになりましたし、眠りが深いぶん朝の目覚めも良く、心身ともに清々しく1日を始められます。

しいてデメリットを挙げるなら、酔っぱらうのが好きな友人からあまり飲みに誘われなくなったことくらいかな(笑)」