――同じアナウンサーとして、互いに意識していたというのはあるんですか?
伊藤 よく似ていると言われるんですけど。2人とも、バラエティ番組を担当することが多かったですからね。でも本質的にはまるで違うので、意識したことはないです。
佐野 アナウンサーとしてのスタイルも違うし、種も畑も育ちも全然違うからね。俺は、『めちゃ×2イケてるっ!』で、伊藤は、『とんねるずのみなさんのおかげでした』。たまぁに、“おおー、伊藤も頑張ってるな”と思うことはあっても、ライバルだと思ったことは一度もない…と思う(笑)。
伊藤 キャラクターも違いますしね。
佐野 そうそう。俺は一から十まで、緻密に計算するタイプだけど、この人は緻密に見えるんだけど、案外大雑把でざっくりタイプだから。俺は全部決めてやるのに、伊藤はその場の感覚で、適当にぱぱっとやっちゃうというね。
伊藤 違う違う! それは違うって!!
佐野 いや、お互いそれでうまくいってるんだから、よかったんだよ。俺は緻密で、伊藤はざっくりで。
伊藤 違うって。佐野さんはスタッフが緻密だから、ほうっておいても、おいしくなるようなステージにいただけでしょう?
佐野 ん!? あ〜っ、それは……あるかも? いいこと言うね?
伊藤 でしょう!? めちゃめちゃおいしいんですよ。
佐野 あっでもやっぱり違う。ちっともおいしくないよ。だってさ、ちゃんとやんないとすげぇ、怒られるんだぞ。

「番組の演出にどう応えるかは2大バラエティに学んだ」ーフジテレビ・佐野アナと伊藤アナの仕事の流儀
フジテレビの男性看板アナウンサー、佐野瑞樹アナ(94年入社)と伊藤利尋アナ(95年入社)による対談。今回はフジが誇る2大バラエティ『めちゃ×2イケてるっ!』と『とんねるずのみなさんのおかげでした』について語ってもらった。読んだらテレビ業界で仕事がしたくなる!? 90分間ふたりが喋り倒した対談の中盤戦をお届けする。
フジテレビアナウンサーたちの素顔と本音vol.8 佐野瑞樹と伊藤利尋 中編

違う畑で育った2人

やりがいと幸福感
伊藤 ちゃんとやらないと怒られるのは、当たり前でしょう。こっちは、何が起こるかわからないところで、瞬時にどうやったら面白くなるかを考えなきゃいけないステージにいたんですからね。言いたくはないですけど……能力の差は、歴然でしょう(笑)?
佐野 そっちは何があったって、時間がくれば終わるだろう。タカさん(石橋貴明)か、ノリさん(木梨憲武)のどっちかが「もう、終わろうぜ」と言えば、それで終わりなんだからさ。こっちはディレクターがOKを出すまで、ずっとやらなきゃいけないんだからな。ずっと続く長い戦いだったんだから。
伊藤 ん!? 佐野さんいま、はじめていいことを言いましたね?
佐野 えっ!? そう? 俺いま何か言った?
伊藤 バラエティのイロハを学んだステージが、それぞれに違うという話は、意外にも芯を食った話で。我々が番組の演出にどう応えるかという肝の部分だと思います。
僕はその状況の中で、いま何が面白くて、この瞬間目の前で起きていることを編集するとすれば、どこが使い所になるだろうかというのを、台本にない世界で判断するというのがメインのステージだったわけです。
で、佐野さんは大きな絵がある中でどう泳いだらいいのかを考えるというのがメインステージで――。
佐野 こっちは、全部逆算。アウトプットは、みんなわかっているわけですよ。問題は、どういう道順でそこに辿り着くかで。あそこに行くためには、その三つ手前で、極楽加藤さんに怒ってもらっておかなきゃダメだなとか。全部逆算しているわけですよ。だから一つ間違えると、最初からやり直しになっちゃう。
伊藤 『めちゃイケ』と『みなさん』では、同じバラエティでも、作り方が、全然、違うんですよね。僕と佐野さんが恵まれていたのは、その2つの番組の中に、各々ちゃんと自分の居場所というのがあって、自分を大切にしてくれるチームに巡り会えた……ということに尽きると思います。
佐野 俺たちは幸運だった。俺たちは恵まれていた――それで終わらせちゃいけないというのはわかっているんだけど。でも事実として俺たちは本当にラッキーだったし、恵まれていたんだよなぁ。
真っ黒な台本と真っ白な台本
――そんな2人だから、本人たちの思いはどうであれ比較されてしまうんですよね。
伊藤 弊社に『ネプリーグ』というクイズ番組があるじゃないですか? 最初はあの番組の『天の声』を僕が担当していて。
佐野 伊藤が10年やって、そのあと俺が引き継いで7年やって。
伊藤 2021年3月から、僕がまた担当しているんですけどね。戻ったその日に、番組スタッフが言うわけですよ。伊藤さんの台本は、渡されたときのままで綺麗ですけど佐野さんの台本って、書き込みで真っ黒なんですよねって。
佐野 だろう? それがね『めちゃイケ』と『みなさん』の違いなんですよ。僕はきっちりと台本に書き込む、緻密タイプだから。
伊藤 そう。緻密に書くのにしゃべりがちっとも緻密じゃないというね(笑)
佐野 だって……書き込んでおかないと忘れちゃうだろう?
伊藤 力の差は歴然ですね。
佐野 違うんだって。俺は全部書いて、ディレクターの要求に完璧に応えているけど、伊藤は人の話を聞いていないから、6割くらいしかやっていないんだよ。それなのに毎回“おれはやってやったぞ!”みたいな顔をしちゃってさ。
伊藤 え〜っ!? してないでしょう、そんな顔は? してる!? うそだぁ。
佐野 してるって。だから俺はいつも「佐野さん、ありがとうございました。佐野さんがいて、助かりました」って言われるけど、伊藤はあれだろう? 「お疲れさまっす」みたいな軽い感じだろう?
――あのぅ…念のためにお伺いしますが…。お二人の会話って、いつも、こんな感じなんですか?
佐野 いつもこんな感じ? 今日だけ特別? さぁ、正解はどっちでしょう?
――いつも、こんな感じ…なのかなぁと。
佐野 まあこんな感じです。
伊藤 やめなさいって、そういうのは(苦笑)。だから、先輩として立てようと思わなくなっちゃうんですよぉ。
佐野 立てろよ?
伊藤 最初は、ちゃんと立てていたんですけどね。
佐野 嘘だろ。最初からなかったろう?
伊藤 いや、ほら。佐野さんって、強めにいったほうが光るタイプの人だっていうのが、わかっちゃったから。それで、ですよ。
佐野 それって、褒めてる?
伊藤 もちろん、最大級の褒め言葉です。「イジると面白いひと」
佐野 うん。だったら、いいや。

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https://www.fujitv.co.jp/recruit/
取材・文/工藤晋 撮影/猪原悠
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