石油財閥として名高いハマー・ファミリー
『House of Hammer』は3話から成り立つドキュメンタリーで、アメリカの石油財閥として名高いハマー・ファミリーの、5世代にわたる屈折した歴史にスポットライトを当てています。初代がロシアから移民としてアメリカにやってきたのが1875年。ロシアが投資したいくつかの会社に関わってマネーロンダリングし、ロシア共産党が目的とする革命の資金繰りに携わっていたという噂。医師である彼は、人工妊娠中絶手術で患者が亡くなったことにより、傷害致死で刑務所へ送られます。
2代目は石油で財を成し、女性関係の醜聞をさらしました。そして3代目はドラッグにまみれ、ギャンブルがらみで人を射殺。アーミーの父の4代目は祖父に気に入られ、3代目を飛び越して全財産のほとんどを相続しました。彼も10代の頃から父のドラッグ・パーティに顔を出していたことを暴露されています。
ハマー家の5代目となるアーミーの、冒頭に挙げたスキャンダルも紹介されます。レイプを告発したのは“ヨーロッパに住むエフィ”なる女性で、3月3日にオンライン記者会見を行いました。「アーミーは2017年、ロサンゼルスで、4時間という長い時間、私をレイプしました。頭を壁に強く打ち付けられ、足をムチで打たれ、肉体的にも精神的にも多大な被害を受け、殺されると思ったくらい怖かった」と泣きじゃくりながら訴える画面が、ドキュメンタリーで何度も流れるのです。
また、SNSで声をかけられたというテキサスの美人ビジネスウーマン、コートニーも登場。「きみの肋骨をバーベキューにして食べたい」とか「きみの体に噛みつきたい」といったアーミーから送られてきたメッセージのスクリーンショットが映され、2週間の旅行では、「彼は優しくて親切だったけど、性的嗜好が極端で不安でした。日本の緊縛画像をアートだと見せられたことも」と証言します。
ただ、最初のエフィは出演を断ったのに、勝手に記者会見の映像を使用されて憤慨しているという声明を出し、後者のコートニーは不安を語りながら、嬉々として再現ドラマに本人役として出演しているのです。ドキュメンタリーとして真実を追及しようとする姿勢があるのかどうか、疑問を感じざるをえません。