最大公約数的な「懐かしさ」としてのバナナ
——そもそも、なぜ「東京」で、なぜ「バナナ」なのでしょうか?
弊社が「東京ばな奈」の開発に着手したのは1989年。ちょうど元号が平成に変わるタイミングということもあり、「東京を代表する新時代のお土産をつくろう」という狙いがありました。というのも、当時は東京を代表するようなお土産が、まだほとんどなかったんです。もちろん、東京にも「雷おこし」や「人形焼」のような人気銘菓は存在しました。ただ、それはもう少しローカルなもので、地元で長年愛されてきた銘菓が「東京土産」としても使われている、といった様子だったようです。
——たしかに、雷おこしであれば、「東京のお土産」というよりも「浅草のお土産」といった方がしっくりきますね。
そうなんです。だからこそ、東京全体を代表するようなお土産を開発しようということになったんです。ただ、そういったコンセプトで商品を開発する場合、地元で採れる果物などをベースにするのが王道なのですが、当時の東京ではお菓子のベースになるような食材を見つけることができず……。そこで目を向けたのが、東京という土地の特異性です。
——と、言いますと?
東京には日本各地から人が集まってきますよね。だから「地のもの」にこだわるのではなく、むしろ出身地を問わず誰もが「親しみ」や「懐かしさ」を感じる食材をベースにしようと発想を転換したんです。その結果として辿り着いたのが、「バナナ」という食材でした。
「バナナ」というありふれた食材を選んだのは、当時の世相も関係しているようです。時代はまさにバブル真っ只中で、スイーツの世界でも高級路線が人気でしたが、いずれもっと素朴で親しみの持てるお菓子に人々が回帰するのではないか。そんな推測もあったと聞いています。