「運ぶ人がいなければ農家も出荷できない」庶民の食卓への影響
こうした人手不足は、運送会社だけの問題ではない。
トラック輸送は、スーパーに並ぶ野菜や肉、魚、日用品など、私たちの暮らしを支える重要な役割を担っている。
ドライバーが不足すれば、これまでと同じ量の商品を、同じ頻度で運ぶことが難しくなる恐れがある。
国土交通省の検討会が示した2030年度の輸送力の見通しでは、新たな対策を講じなかった場合、輸送需要の想定によっては平均で約7%、最大で約25%の輸送力不足が生じる可能性があるとされている。
官民による物流効率化などの取り組みは進んでいるものの、人手不足への対応は引き続き大きな課題だ。
特に影響が懸念されるのが、鮮度が重要な野菜などの農産物だ。人手不足が食品の流通や店頭価格に与えかねない影響について、現場ではどう感じているのか。
「食品価格への影響はあるんじゃないですかね。やっぱり他の(大手)運送業者さんに頼めば、それなりの運賃がかかりますから。その分、食品の方にも負担がかかってくると思います。
それに、うちがやっているのは青果物の配送ですけど、農家の方も運んでくれる運送会社がいなければ出荷できないじゃないですか。そういうところにもつながっていくんじゃないでしょうか」(中小運送会社ベテランドライバー)
運送会社が確保できなければ、農産物の出荷に支障が出る恐れもある。特に、鮮度が求められる青果物では、必要なタイミングで輸送できる体制を維持することが重要になる。
燃料費が高騰すれば、運送会社は増加したコストを負担するか、運賃の引き上げを求めることになる。さらに、ドライバーの確保が難しくなれば、別の運送会社に配送を依頼するための費用が増える可能性もある。
こうした物流コストの上昇が食品価格に転嫁されれば、最終的には消費者の家計に影響する。
ただし、食品価格は生産量や天候、原材料費、為替など、さまざまな要因によって変わるため、軽油高騰や人手不足だけで値上がりが決まるわけではない。
それでも、男性が語った「運ぶ人がいなければ農家も出荷できない」という指摘は、物流が私たちの生活を支える欠かせない存在であることを改めて考えさせる。
軽油価格が下がれば、運送会社の燃料費負担は軽くなるだろう。しかし、それだけでドライバーの高齢化や若手不足が解消するわけではない。
豊洲市場を支えるベテランと大手運送会社の30代ドライバーからは、ともに「もっと働いて稼ぎたい」という声が聞かれた。しかし、長時間労働を防ぎながら、働く人が十分な収入を得られるようにすることこそが、本来目指すべき姿だろう。
働き方改革が進む一方で、運送業界は若い世代が将来を託せる仕事になっているのか。
物流を支える人材が不足すれば、その影響は私たちの食卓にも及びかねない。労働時間の短縮と収入の確保をどう両立させるか。運送業界はいま、その難しい課題に直面している。
取材・文/集英社オンライン編集部













