「危険なことをした人が遭難する」ニュースが生む思い込みとは?
毎日のように山へ行ったとしても、遭難する確率よりも無事に帰れる確率のほうが圧倒的に高い。しかしその一方で、山岳遭難のニュースをよく目にする。年間3600人超が山で遭難するのだから、滑落や雪崩のように映像映えするセンセーショナルな遭難事例は一定数報道される。
そういったニュースを繰り返し見ていると「遭難するのはバックカントリースキーのような危険なことをする人」「北アルプスのような険しく難しい山で起きること」という印象が積み重なっていく。
「無謀な人が厳しい山にチャレンジして遭難した」というストーリーは非常に理解しやすく、記憶にも残りやすい。一方で、なんでもない登山道を歩いていて転んで骨折した、持病が突然悪化して動けなくなったなどの遭難事例はニュース性がないため、ほとんど報道されない。だから「遭難=特別なことをした人による事故」という印象が強化されていく。
「遭難するような山に私は行かない」という発言の背景には、遭難=滑落のような危険な行為のイメージがある。しかし実際の遭難統計を見ると、滑落で遭難する人は全体の17.3%にすぎない(「令和7年における山岳遭難の概況等」警察庁)。多めに見積もっても、8割以上の人は滑落によって遭難したわけではない。
実際に多いのは迷子や骨折。高尾山は年間106人と国内最多の遭難率
実際に多いのは道迷い、転倒による骨折、病気による行動不能、疲労の蓄積による歩行困難などによる遭難だ。道迷い遭難に至っては、地形が複雑な低山で発生件数が多い傾向にある。脳梗塞や心臓病などの病気は平地でも突然起きるが、運動によって心肺への負荷が上がることで、もともと持っていた疾患が山の中で症状として表われることがある。また街中では発病してもすぐ医療につながれるが、山の中ではそんなわけにはいかない。
「滑落するような山には行かない」としても、こういうリスクはどの登山者にもある。
ちなみに2025年は約300万人が高尾山登山に訪れ、そのうち106人が遭難している。遭難率は0.0035%であり99.9965%は遭難しないが、登山者数が多いため件数としては国内最多になる。
この事実が示すのは「簡単な山だから遭難しない」という理屈は成立しないということだ。登山道がある山であれば、どんな山でも遭難する確率はゼロではない。













